ひとり親家庭が「働いても低収入」な事情。離婚で損なわれた「自己肯定感」を取り戻すところから

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「どんな仕事があるのか」を知らない

 子どもの成長に伴い、家計の支出は増える。食費、衣類、塾、携帯電話など、子どもにとっての「普通の生活」に必要な額が上がっていくのは必然だ。大学進学を望めば教育資金も積み立てたい。ゆえに、親は長い目で自分自身のキャリアパスを考える必要がある。

 キャリアパスとは、キャリアアップの道筋。長い目で見れば、アルバイトや平社員のまま何年働いても給与が上がらない職種や職場ではなく、経験を積むことでポストも給与も上昇することが望ましい。

「やっぱりキャリアパスがある職種の方がいいと思います。リーダーとして新人指導をするなど優れたスキルを発揮するパートさんもいるはずですが、それでもその職場にキャリアパスがなく、お給料も頭打ちならば、そこを抜け出してより良い条件の職場に映るとか」

 かつて日本社会は、男性が正社員として長時間労働に奮闘し、その賃金で一家が生活する“家族給”という考え方が基本とされていた。

「その時代は教育費と住宅費を加味して賃金も右肩上がりになっていましたが、今それはもう崩れてしまっている。 女性の場合はさらに、年齢が上がるにつれて収入が下がる傾向もあり、本当に厳しいと思います」

 キャリアパスのある職業として、赤石さんが例に挙げるのは、介護福祉士や看護師、経理事務など。とはいえ、当事者の希望や適性もある。

「自分はどんな仕事がしたいのか、何が向いているのか、色々なキャリア相談を受けながら考えていくといいでしょう。たとえば東京都の『ひとり親支援センターはあと』では、適性検査を実施していますが、適性検査も含め、自分が接客に向いているのか、人のケアに向いているのか、事務に向いているのか、そういったことを一緒に考え、伴走してくれる場が必要だと思います。

介護分野だったら、まずは介護職員初任者研修、実務経験3年で介護福祉士、さらに実務経験5年でケアマネージャーの資格を取れ、徐々に収入を上げることもできますので、“介護が向いていると思われる方”には適していると思います。ただ、勤務先によっては正社員になると夜勤が入る可能性もあり、みなさんそこは覚悟されていますね。

看護師も夜勤がありますが、安定した収入やキャリアパスはあると思います。普通の会社員でも資格を持つ、例えば経理ができるようになればある程度の収入が見込めます」

 しんぐるまざあず・ふぉーらむでも、化粧品会社の異本ロレアルと連携して、シングルマザーキャリア支援プログラム「未来への扉」を用意している。講座日程は、5カ月間、隔週日曜日の午前10時~午後4時。無料の託児があり、ひとり親にも通いやすいスケジュールだ。受講終了後、希望者には日本ロレアルの美容部員、もしくは人材派遣会社アデコのスーパーバイザー職またはオフィスワーク職の採用面接を受けるチャンスも提供される。

「隔週にしているのは、もう1回の日曜日はお子さんと過ごしてもらい、講座のある日曜は午前午後フルで受講してもらえればと考えたからです。どちらかといえば転職支援で、パートで働いていてスキルアップを目指す方に向いているのですが、現在別居中でこれから就職したいという方もいらっしゃいます。

受講されるみなさんは、この間に、私たちと色々相談しながら自分のことを考えていきます。難しいのは、“今の社会にはこんな仕事があるんだ”ということを知られていない点ですね。面談をしていると、キャリア相談を受けたことがなく、目の前のものに飛びついてしまう傾向を感じます」

 その背景には、目の前にあるものに飛びつかざるを得ない、その人の状況もある。

「やっぱりみなさん、“早く収入を得たい”という思いがあります。今月の生活費が足りなかったり、家賃が払えなかったり。だからご実家に帰られる方も結構いらっしゃいますけれど、それは住宅費がネックになっているのです。中には、貯金を切り崩しながら離婚手続きが終わるまでの1年をどうにかつないだという方もいらっしゃいますが、そういう“貯め”がないと非常に大変です」

 社会にはさまざまな職業があるが、仕事に加えて育児も担わなければならないシングルマザー女性にとって「やりたい」という気持ちの面で、選ぶ職業は事務職が多い。ただ、他の職種に比べ、事務系は狭き門だ。今年2月の有効求人倍率は1.63倍。しかし、職業別に見てみると、たとえば事務系の職業は1.0倍を切っている。

「事務職で9時5時、できれば正社員で、それで暮らしていけるような賃金を得るというのが、多くのシングルマザーの理想ですが、なかなかないですね」

 求人サイトを覗くと営業職の募集は常に多い印象があるが、「ノルマや残業等がありそう」といったイメージから、ハードルの高さを感じてしまう女性も少なくない。もちろん、女性を営業職に積極採用し、女性社員が活躍している企業もあるが、具体的に「営業」がどのような仕事なのかがわかりづらいことも、敬遠の一因になっているかもしれない。

 一方で、女性に身近な職業であるエステサロンやネイルサロンなど美容系の仕事は、人気が高いという。

「“美の世界”って魅力的ではあるので、惹き付けられるのはわかります。ただ、自営では状況によって多くの報酬を得づらいという可能性もあります。たとえばエステサロンの請負で、求人票には『あなたの都合で働けます』『シフトを自由に選べます』という謳い文句が躍りますが、収入に繋がらないケースもあります。もちろん成功している方もいらっしゃいますが……」

 また、もし自分でサロンを開くとなれば、営業も広報も事務作業も、そして接客も自分で行わなければならない。その日、その月の売上によって、収入は変動する。

「余裕がないうちは、雇用されていたほうがいいんじゃないかと、私は思います。自営だと給与所得控除も適用されず、社会保険もないから国民健康保険になり、国民年金も全額自己負担。経費もかかります。自営で得られる収入で暮らしていけるとは限らないのです」

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