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クレーマーは敵ではない~クレームと友だちになる方法

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「Getty Images」より

 吉本興業に勤め始めた若い頃、クレーム電話を取ることが多かった。電話で怒鳴られ、何十分、何時間も文句を言われたり、不条理な要求をされたりすることで、相手のことを「敵」と思うようになっていた。

 たとえば、「前売り券を購入したが、どうしても行けなくなったので払い戻しをしたい」という内容の電話を受けたことがある。私は確認のため、前売り券担当者に内線で事情を聞くことにした。しかし、なかなか担当者につながらず、結果的に電話のお客さんを5分以上待たせることになってしまった。

 電話を再びつないだ途端、お客さんは、「アホンダラ! いつまで待たしとるねん! 俺がかけた電話やぞ!」と怒り心頭である。しかし、私は担当者に確認をとった上で、「チケットの裏面にも書いてありますように、やはり払い戻しは無理です」と伝えた。もちろん、お客さんはえらい剣幕だ。

 その時点で、お客さんの怒りは、払い戻しができないことに対してではなく、別の新しいものにすり替わっていた。そう、かけてくださった電話にもかかわらず、こちらの都合で待たせるだけ待たせて、挙げ句の果てに返金できませんとなったことで、怒りは種類を変え、「待たせた時間を返せ!」に変わってしまっていたのだ。

 払い戻し希望の電話だったのが、待ち時間で怒りに変わってしまったのだ。問題は、待たせた私にあったのである。「怒りの中身」を解読すればすぐにわかることだ。以来、私はクレームの本質が何であるかを探究することで、それらを単なるクレームとして片づけてはならないと認識するようになった。

クレームとは、本来「苦情」や「改善要求」「権利請求」という意味である

 ユーザーがクレームをするには必ず理由がある。「本当にわからなくて困っている」「理解していたことと違っていた」「会社に注意したい」「とりあえず気に入らない」などである。それを単純に「クレーマーは敵だ、やっかいだ」と決めつけてはいけない。

 そもそもクレームとは、正しくは「苦情」や「改善要求」「権利請求」などのことを言う。単に本人の身勝手な「文句」「不平不満」「謝罪要求」「暴言・暴行」だけではないのだ。クレームは本来、「自社や自分にとっての弱点と参考になる意見」という仕事のヒントを探し出すことができるものである。それを、クレーマーは「怖い」「うっとうしい」「面倒くさい」と自分の都合でとらえ、すぐに「クレーマーからの攻撃だ、脅迫だ」などと言い出すと、大切な「ユーザーの意見」を聞き逃すことにもなる。

 何をもって「クレーム」とするかは、それぞれの会社や団体によって基準があるだろう。しかし、その基準を越えるか越えないかの微妙なところで、先方の言い分を頭から否定的にとらえてしまうことは危険だ。

 だから、クレームからは逃げずに友だちになってほしい。もちろん「恐喝」「強要」「業務妨害」など、内容が悪質な時には対抗手段をとるべきだ。それでも、クレーマーもいちユーザーであることを忘れてはならない。節度を越えている相手をユーザーとは呼びたくない気持ちもわかるが、ユーザーであることに違いはないのだ。話し方や伝え方が怖かったり、上から目線で怒鳴られたりしたとしても、ここを「貴重なご意見」と取るか「クレーム」と取るかは、重要なポイントである。

「クレーマーとは何か」という定義を明確にする

 面倒なクレームを何十分も何時間も聞いているのは、地獄の苦しみだ。それは私もよく知っている。クレーマーと特定された相手方にもいろいろなパターンがある。最も判断が難しいのは、こちらに非があるのかどうかわからない場合だ。だからこそ、現場では先方の言い分をよく聞き、本当に自社の会社に責任があるのかどうかを見極めることが必要だ。

 ただ、安易な謝罪は逆につけ込まれ、不当な要求を突きつけられたり、SNSで炎上するように仕向けられたりすることもある。きっちりとした説明や謝罪ができないと、逆に会社の信頼問題に発展し、組織が崖っぷちに立たされる恐れもある。

 そのクレームが会社や団体にとって、「単なる不平」なのか「参考意見」なのかを選別し、それに合った対処が必要なのだ。「クレーマーとは何か」という定義を明確にして、それに従って「顧客対応」もしくは「クレーマー対応」を行っていかなければいけない。

 ただ、ユーザーの怒りが爆発すると、必ず出てくるのが便乗犯である。モンスター化した便乗クレーマーは「私も同じような目に遭った」「私はもっとひどい対応をされた」などとウソを言い、それをまたSNSで広めたり、会社にしつこく電話をかけたりする。なかには、チラシを刷って周辺に配る人も出てくる。

 今日ではこういった人たちを「カスハラ(カスタマーハラスメント)」と呼ぶ。企業や団体、商店などにとっても大きなリスクである。

 たとえば、書店で書籍を購入した後で、「前に読んだような気がする」とか、「少し読んだけど面白くなかった」と言って返品を求めたりする人がいるという。書籍は試し読みという意味で、書店内での立ち読みは多くの店で許容範囲とされている。しかし、いったん購入した後に「返品希望」するのはクレームの域を越えているだろう。それは「言いがかり」や「いちゃもん」といった筋の通らない主張だ。そういう悪質なクレームはキッパリと断ろう。

「クレーム=いちゃもん」ではない

 悪質なクレームが後を絶たないのも事実だ。かといってユーザーからのクレームをいちゃもんと決めつけると大変なことになる。

 まずは受けたクレームの内容、やり取りの履歴などをしっかり記録に残し、社員間で共有することを勧める。他部署や営業所との間ではもちろん、他社の関係者との間でも情報共有をすることによって、いろいろな対処の方法についての気づきがあるだろう。

 先方の言いたいことをよく聞き、不服・不満のポイントを冷静に分析しなければならない。落とし所を探し、場合によってはしっかり謝罪をして、対応策を伝え、感謝の意を伝えることも忘れてはならない。

 単なるユーザーの都合だけの苦情で終わらせるか、貴重な参考意見とするかで、企業の未来は決まるのだ。

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