
「Getty Images」より
物議を醸した内定獲得後の「マナーセミナー」
何かと話題になることの多い就職活動(就活)だが、それはまた炎上のネタを投下する人が跡を絶たないということでもある。最近もまた、「内定を辞退する際には直接会って言え」と書いた日経新聞[y1] の記事が論議を呼んでいた。
といっても、日経の主張というより、学習院大学が学生向けに開いた「内定獲得後のマナーセミナー」を紹介する記事だ(記事では「内定」とあるが、記事を読む限り内定と内々定を厳密に区別した議論ではなさそうにみえる。実際、法的性格や儀式はともかく、内々定は企業が大人の事情で内定を出せないタイミングで就活者を囲い込むための方便なので、裁判にでもならなければ事実上区別する意味はあまりない。本稿でも区別しない)。
講師曰く
・「自分を選んでくれた企業に感謝の心を持ちましょう」
・内定は得たが他に本命がある場合「就活を継続したい旨は内定先企業に伝えたほうがいい」
・本命から内定をもらったときは「メールの送りっぱなしや電話で完結してはダメ。必ずその企業に足を運ぶことが重要」
だそうだ。最近「マナー」を謳った記事でまともなものを見た記憶がほとんどないのだが、これもまたその類いのように見受けられる。「感謝の心」はまあいいが、他に本命がある場合は伝える、は現実的ではない。他に本命があるかどうかはたいてい内定を出す前に聞かれるから(聞かなかったとしたらその人事担当者の不注意だ)、それが内定を出すかどうかの判断に影響するだろうことは誰でもわかるし、内定後に言えば「嘘つき」と責められるのがオチだ。ましてや直接会って辞退しろ、は論外としかいいようがない。今どき、忙しい人事担当者に先のない話のための時間を割かせることのほうがよほど礼を失するだろう。
ひょっとしたらこの講師は、内定辞退を減らしたいのかもしれない。実際に会わなければ断れないと思えば内定者の心も鈍るだろうし、直接会えば辞退を思いとどまるよう人事担当者から説得する機会も作れる(個人的にははるか昔、内定先に断りに行ったら赤坂に飲みに連れ出されて結局入社することになった経験がある)。採用難とやらで人事担当者が困っている昨今、そうやって辞退を減らせれば、顧客である企業から高く評価されるのだろうか。