内定辞退マナーなど言語道断、破綻しつつある新卒一括採用と終身雇用の構造

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早く内定を出したところでまったく意味はない 

 せっかく時間と手間をかけて選考したうえで内定を出したのに、メール1本でそれを反故にされる企業の立場になってみろといいたいのはわかる。だがそれは就活者側も同じだ。時間と手間をかけて企業分析を行い、その会社のためだけにエントリーシートを(多くは手書きで)書き上げ、せっせと面接の練習までしたのに「お祈り」メール1本でおしまいにされる経験を何度もするわけで、そのための無駄骨と機会費用たるや相当なものだ。最近の調査だと、就活者は平均約40社にエントリーシートを送っているらしい。

 2010年代の前半なら80~100社といった話もごろごろしていた。もちろん就活者は、だからといって人事担当者にわざわざ足を運んでもらおうとは思うまい。そんな暇があれば次の志望先に向けた準備に時間を割くだろう。企業の人事担当者とて、合理的な人であれば同じように考えるのではないか。

 さらにいえば、企業と就活者は対等な関係ではない。企業にとって採用数が1人減ることは、採用総数が1人でない限り、全体の中の一部にすぎない。しかし、就活者にとって、内定先が1つ減ることは、すでに他の内定を得ているのでなければ、就職先があるかないかの分かれめだ。就職機会が新卒に偏っている現状で、このことがもつ意味を考えてみてほしい。よく就活を結婚になぞらえて語る人がいるが、もしどうしても結婚にたとえたければ、多くの側室を抱えた大名あたりを想像してみるとよい。「会って断れ」がどれほど乱暴な主張かわかる。

 いうまでもなく、企業が早く内定を出すのは、「優秀」(と彼らが判断した)な新卒学生を早く確保したいからだが、そうした学生はえてして他社もほしいわけで、内定を出してもしばしばより望ましい(と就活者が考える)企業に奪われてしまう。結局、早く内定を出しても逃げられる人には逃げられるわけで、あまり意味はないのだ。

 会社が内定切りや解雇を行うには合理的な理由が必要だが、就活者が内定を辞退したり社員が会社を退職したりするのに理由はいらない。これは企業と労働者の力関係のアンバランスを是正するための労働法の定めであって、内定辞退を事実上の圧力で減らそうとするのはそうした法の趣旨に沿ったものとはいえない。

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