内定辞退マナーなど言語道断、破綻しつつある新卒一括採用と終身雇用の構造

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成り立たなくなってきた新卒一括採用と終身雇用のしくみ

 卒業後に就活するという案については、就職のタイミングが遅れて定年までの期間が短くなってしまうとする反対意見をかつてよく聞いた。しかし2019年5月7日、日本経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は定例会見で、終身雇用について「制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発言した。2019年5月13日、トヨタ自動車の豊田章男社長も日本自動車工業会の会長会見で「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べている。真意はよくわからないが、定年前の整理解雇の可能性を示唆したものだろうか。もし終身雇用が保てず、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に転換していくのであれば、就職が1年や2年遅れても企業にとってさしたるデメリットはなかろう。

 もちろん、採用決定してすぐに働かせても、逃げる社員は逃げるだろう。しかし、それは結局その人が会社に合わないことが明らかになったということであって、それが早く明らかになったことをむしろ喜ぶべきではなかろうか。もちろん、採用決定前に明らかにできればもっといいわけで、その意味では、現在のような面接での印象に頼った選考方法自体を改めるのがスジだ。面接、特に日本の就活で一般的なフリー面接が有効な選考方法でないことについては、すでにいくつもの研究成果がある。

 たとえば、米国などではワークサンプルによる評価などが注目されている。面接と比べてコストのかかる方式とされているようだが、実際に社員として働いてもらえばその成果はより実践的なワークサンプルと位置づけることができよう。もちろんそのためにはどんな仕事をさせてどのような能力をどのように測るのか、具体的に決めておく必要がある。人事部門と現場との緊密な連携も重要で、そう簡単なものではないが、検討する意義はある。

 というのも、この問題はより深い構造問題に直結しているからだ。内定辞退という問題は現在の採用難を背景にいわれるもので、ほんの数年前は就職難を背景に内定切りが大きな問題となっていた。つまり、どちらにせよ景気変動による一時的な問題であるわけだ。そういう表面的なことより、ここ数十年変わっていない構造問題を注視すべきだろう。

 すなわち、就職活動のために勉学の時間が奪われる。そのため高等教育の効果が十分卒業者に反映できていない。そうやって採用したにもかかわらず入社3年以内に約3割が退職するミスマッチがある。内定辞退はそれが早く表れたものにすぎない。現在の企業の就活者選考方法に潜む根深い問題への抜本的な対策をこそ、考えるべきではないだろうか。

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