「いまどきの抱っこ紐は赤ちゃんの成長に悪影響を与える」という呪い

連載 2019.06.04 06:35

 さらに前出の「だっことおんぶを語る会」の他メンバーも、主張のまとめをnoteで補足(育てにくさを減らしたい! だっこ・おんぶを見直してください)。

・赤ちゃんの成長発達の状態に関係なく、股関節を大きく開いて固定すると、無理な姿勢が生じがちで成長発達に悪い影響を与えるのではないか?

・抱っこ紐は、養育者が子を手で支える必然性がないように作られている→赤ちゃんのお尻を手で支えたり背中をさすったりといった、赤ちゃんの身体感覚、皮膚感覚の刺激を与える動作が急激に減少する。
(抱っこ紐に入れてても、手が空けばお尻を支えたり手足に触れたりすると思うんですが……。「荷物のようにぶらさげてる!」って話に誘導してない?)

・密着感のあるおんぶや抱っこは養育者の胸や背中から存在を感じ、ケアをされている感覚を持つことができるが、現在の抱っこ紐やおんぶは自然なコミュニケーションの機会としての役割を果たしにくい。
(ケアされている感覚って、どの赤ちゃんが主張しているんだ?)

・長時間の抱っこやおんぶは赤ちゃんがひとりで床の上で寝る時間を減らし運動の機会を減らす。また、上げ下ろしや装着に手間がかかる抱っこ紐は、赤ちゃんの長時間の拘束を誘導している!
(慣れの問題では。エルゴでも30秒~1分くらいで装着できると思いますけど……)

・いま流行の抱っこやおんぶは、前が見えにくく視覚刺激が得にくい。養育者との共同注視も難しい。かつては養育者の肩越しに手の細やかな動きなどを学習していたが、その機会が与えられない。
(前向き抱っこできるタイプじゃダメなんでしょうか?)

 うーん。こういっては何ですが、重箱の隅をつつくがごとく……と感じてしまいました。

それって現実的な“抱っこ”なの?

 エルゴ系抱っこ紐の魅力は体が楽なことに加え、両手が空くので、荷物も持てるし家事などの用事もできるという点も大きいものですが、「本当の抱っこ」では、なかなか他のことをしながらというのが難しそう。さらに上の子どもがいる家庭では、新生児期でも室内に籠っていられませんから、相当不便なんじゃなかろうか。

 絆が形成されるようなコミュニケーションとりながら体の発達を妨げない抱っこ&おんぶをして(ついでに文化も継承)、上の子の安全も守りながらのときには理不尽な欲求にも対応し、家事タスクも処理しつつ、なんなら仕事も始めなきゃって、かなりのムリゲー。慣れれば無意識のうちに「本当の抱っこ(orおんぶ)」ができるようになるんでしょうけど、そこまでたどり着くまでにゆとりをもって取り組める親が、いまどれくらいいるんでしょうか(金銭的にゆとりのある自然派系なら楽勝?)。

イクメンも聖母も幸福も「幻想」。打算的に生きていい/小島慶子さんインタビュー

 元TBSアナウンサーでありタレントとして活躍、現在はオーストラリアに移住し、執筆活動をメインに日本と豪州を行き…

ウェジー 2018.08.17

おもいでおんぶ」というおんぶ紐やスリングを販売しているHPでは、紐を使った昔ながらのおんぶをこう解説しています。

・昔ながらのおんぶは高い位置でおんぶができるので、赤ちゃんの吸収する情報量がとっても多いものです。興味を持つ対象が増えることから、赤ちゃんの脳の発達にもよいといえます。
(脳まで言っちゃったー)

・ストラクチャータイプの抱っこひもやおんぶ紐の中には子どもの股間節にベルトが入り、まるでスカイダイビングをしているような体勢で子どもをぶらさげて抱いたり、おぶったりする構造のものもあります。このような形の抱っこひもやおんぶ紐では、子ども自身が自身の筋力を発揮することができません。
(抱っこ紐から出れば、いやというほど筋力を発揮するのでいいのでは)。

> 次ページ

1 2 3 4 5

山田ノジル

2019.6.4 06:35

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。

twitter:@YamadaNojiru

Facebook

関連記事

INFORMATION
HOT WORD
RANKING

人気記事ランキングをもっと見る