
「Getty Images」より
女子大学生が就職活動で直面する問題
2019年5月1日時点で、大学生(大学院生除く)の就職内定率は51.4%となっており、すでに就職活動を終えた大学生もいるだろう(リクルートキャリア2019)。大学生の多くがこの活動を機会に、自らの将来を考えることになる。ここでは、女子大学生の一部が将来を考えるときに直面する問題について考察してみたい。
この問題は、メディアで取り上げられて話題となった、上野千鶴子氏の東京大学の祝辞と大きく関わる。祝辞のなかで、東京医科大における女子学生と浪人生への差別、4年制大学進学率の男女差を例に、社会に出れば、もっとあからさまな性差別があることを上野氏は言及した。女性が「どうせ女の子だから」と、恵まれない立場の者が「どうせわたしなんて」と、頑張る意欲をくじかれることが指摘されていた。
「がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています」と上野氏が述べた、その社会に対峙するタイミングの一つが就職活動だと考えられる。
女性と労働
90年代以降、女子の高等教育進学率は上昇を続けている。1990年女性の4年制大学進学率は10%代だったのに対し、2000年には30%を、2018年には50%を超えた(文部科学省2018)。分野別の男女差があるとはいえ、大きく前進したといってよい。しかし、高学歴を得た女性たちが仕事で自らの能力を活かし、家庭生活も十分に営めているのかといえば、そこにはやや疑問が生じる。少し説明を加えていきたい。
過去30年「働くこと」についての女性の立ち位置は大きく変化した。女性正社員は学校を卒業してから結婚するまでの数年間のみ働くことを念頭に雇用されていた(濱口2015)。こうした状況から、少しずつ変化がみられた。1986年の男女雇用機会均等法の施行以後、一部の優秀な女子は総合職(主に基幹的業務を担う職)への就職を希望した。だが、それもつかの間。バブル崩壊以後、労働環境自体が大きく変化していく。一般職(主に定型的業務を担う職)の採用が雇い止めとなり、パート・アルバイト・派遣社員といった非正規雇用への代替が起こった。安定的な雇用がどんどん減っていく中で、女性は苦戦を強いられてきた(リクルート1996)。長時間労働を中心とし家族を養う「男性稼ぎ手モデル」は変化せず、男性でさえ苦戦を強いられており、女性にその椅子は十分に与えられなかった。こうした状況下で、企業の「女性」に対する固定的なジェンダー規範は十分には変化しなかったと思われる。
新卒就職-採用
新卒就職−採用活動は雇用を縮減したい企業の考え方を如実に反映する。
2010年代、就職活動は概ねインターンシップや企業説明会を経て、選考活動へと移る。その間に、大学生は合同企業説明会に行き、ナビサイトで求人している企業を比較しながら、自己分析を行ったり、業界分析を行ったりして、自らの志望を固めていくことになる。自己分析とは、90年代後半以降に定着・普及した、自分の過去・現在・未来を振り返り「やりたいこと」や将来像、志望を確定させていく作業のことである。それによって、エントリーシートや面接での自己PRを練っていく。
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