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「数学の勉強は将来役に立たない」なんてとんでもない。数学が国富となる「数理資本主義」の時代

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「Getty Images」より

 数学という学問は、その面白さにハマった学生にとってはゲームのように夢中になれるほど面白い。しかし、その面白さが理解できない学生にとっては退屈きわまりない学問だ。

 そこで次のような質問、あるいは言い訳のような言葉が飛び出してくる。

 「先生、どうせ数学なんて、大人になったら役に立たないじゃん」

 さて、教師たちはこの言葉にどのように答えているのだろうか。いや、教師だけでなく、親も含めた大人たちはどのように答えているのだろうか。

 「確かに算数は必要だけど、数学までは要らないかもなぁ……」

 そう答えている大人もいるだろう。その一方で、業務の効率化のために仕事で表計算ソフトを使おうとしたとき、計算式の入れ方がわからない、関数の使い方がわからない、変数の使い方がわからないなどと悩んでいるのではないだろうか?

 それでも表計算ソフトの数学知識はごく基礎的なもので事足りる。ところが時代は、すでに高度な数学能力を有する人材の取り合いになっているのだ。

 私たちが暮らすデジタル社会は、高度な数学理論によって支えられているということを、私たちはすっかり忘れてしまっている。

 そこで、数学力の低下は国力の低下すら招いてしまうのだという危機感を抱いていた経済産業省と文部科学省は、3月26日に『数理資本主義の時代~数学パワーが世界を変える~』という報告書を取りまとめた。

 報告書では、現在進行しつつある第四次産業革命を主導するために欠かすことのできない科学について「第一に数学、第二に数学、そして第三に数学である!」と強く記述している。この報告書には何が書かれているのだろうか。

産業界で数学人材が求められていることに気づいていない学生たち

 報告書では「はじめに」として、世界ではIT機器の爆発的な普及やAI、ビッグデータの活用によりデジタル革命が進んでいることを指摘している。

 その結果、デジタル製品やサービスなどの市場開拓や占有が進み、デジタル新時代において付加価値を創出できる人材の国際的な争奪戦が繰り広げられているという。

 日本としてもこの状況に対応するため、経済産業省と文部科学省は、2016年から産業界のニーズや人材需要調査を行うなどの準備を進めてきていた。2018年3月29日には、「産学連携による科学技術人材育成に関する大学協議体と産業界による意見交換」を開催。産業界が数学の知見を持つ人材を欲しているのに対し、数学を専攻している学生がそのニーズに気づいていないというギャップがあることに課題を見いだしている。

 その帰結として、AIやIoTなどの先端技術を支えて発展させるためには数学が必要であることを、広く世の中に発信することを目的に据えたのだ。

第四次産業革命を制する数学

 報告書では、現在の「第四次産業革命」を制するには、数学が必要だとしており、これを以下のような強い表現で訴えている。

 “この第四次産業革命を主導し、さらにその限界すら超えて先へと進むために、どうしても欠かすことのできない科学が、3つある。それは、第一に数学、第二に数学、そして第三に数学である!”

 お役所が作成した報告書にしては、いささか煽動的な表現だといえるが、それほど強調したいところなのだとわかる。

 そして、その重要性についてAIを取り上げている。すなわち、現在の「第三次AIブーム」の火付け役は深層学習(ディープラーニング)の登場であるとし、この機械学習のアルゴリズムの根幹には数学があるというのだ。

 その結果、ビジネスや社会でAIが活用される範囲が拡がれば、数学はデータ分析やモデリング、シミュレーションで力を発揮し、AIの制御をはじめ、学習データや推定結果の信頼性を高めるために必要になってくる。

 このことから、AI自体のイノベーションにおいては、現代数学の能力こそが決定的な意義を持つのだと主張している。すなわち、“数学を制する者は、第四次産業革命を制す”と結論づけている。

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