「数学の勉強は将来役に立たない」なんてとんでもない。数学が国富となる「数理資本主義」の時代

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先進各国の取り組みと日本

 数学が国富の源泉である「数理資本主義」の到来に対して、すでに先進各国が取り組み始めていることも報告書では紹介されている。

 米国では政府がSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)を科学・技術・工学に並ぶものと位置づけ、研究費を大幅に増強している。イギリスでは、2018年に「The Era of Mathematics(「数学の時代」)」というレポートを作成し、数学のイギリス経済への貢献度は2000億ポンドを占めると試算している。フランスでは、数学のフランス経済への貢献度は約2850億フランとGNPの約15%を占めているとし、数学の人材が海外企業に流出していることを警告している。

 それでは日本では「数理資本主義」に対応できているのであろうか。

 報告書によれば、日本の数学研究は世界でも一定の存在感を示しているという。たとえば、若い数学者の業績を顕彰するフィールズ賞の受賞者数は3名で世界第5位。また、2006年に伊藤清(京都大学名誉教授)がガウス賞の第1回受賞者となり、2018年に柏原正樹(京都大学名誉教授)がチャーン賞の第3回受賞者となるなど、国際的な数学者が出ている。また、高校生等が参加する「国際数学オリンピック」や「国際情報オリンピック」では例年メダリストを輩出している。

 しかし、日本では若手数学者が博士後期課程修了後に選ぶ進路は、約6割がPD(博士研究員)・研究員・非常勤講師や有期の研究教育職となっており、民間企業へ進む人は全体の12%に過ぎない。

 一方、企業側の理数系人材に対する理解も不足しているという。製造業の国際競争力を競ってきた日本では、人材といえば「工学」出身者であった。そのため、いまだに「数学は役に立たない」という先入観がある。このような考えは、「数理資本主義」が到来している現在では時代遅れだという。

 すでに検索エンジンやAIの例で明らかなように、数学が日常生活を一変させるようなイノベーションをもたらすのが「数理資本主義」だ。

 したがって企業側も、短期的な成果を求めるマネジメントを避けるべきだと報告書は指摘している。

国際競争力は数学力で決まる時代

 報告書の「まとめ」は、「第四次産業革命」が進行し、数学が国富の源泉となる「数理資本主義」の到来により、国際競争は数学の競争になると説明している。

 つまり、理数系人材から数学の能力を引き出す経営システムや社会システムにいち早く到達した国が「数理資本主義」時代の勝者になるのだ。しかも、日本が持つ数学能力のポテンシャルは高い。このことにいち早く気づいた文部科学省は、2006年には「忘れられた科学―数学」として問題提起を行ったが、当時は学術界に衝撃を与えるにとどまっていた。そこで、報告書では以下の勧告を結びとした。

 “次は、産業界と経済産業省が具体的に動き出す番である”

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