安全・安心な避妊は人として当然の権利 緊急避妊薬アクセス改善への提言

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「Getty Images」より

緊急避妊薬の処方で日本と諸外国に大きな差

 先日、都内で働く中国人の友人(既婚者)と食事に行った。そこで夫婦間の性生活の話になり、一男一女に恵まれている彼女は「これ以上子どもを持つつもりはないから」と、夫との性生活では避妊に気をつけていると話してくれた。私はその話を聞いたときにふっと気になり、彼女にこう尋ねてみたのである。

「中国では、緊急避妊薬って一般的なの?」

 すると、やや前のめりになって「それについては言いたいことがあります!」と彼女は話し出した。なんでも過去に夫との行為後にコンドームがズレていたことに気づき、翌朝すぐに緊急避妊薬を購入するために婦人科に行ったことがあるそうだ。そこで、緊急避妊薬の高額なことに驚いてしまった、と憤る。

「どうして日本ではあんなに高いの!? 私が婦人科に緊急避妊薬をもらいに行った際には、薬を手に入れるためにトータルで1万5000円以上かかりましたよ」

 ちなみにその当時、彼女の長女はまだ幼く手がかかる時期。次の子どもを出産するタイミングはいまではないと夫婦で話し合い、緊急避妊薬を飲むことにしたそうだ。

 彼女の話によると、中国では緊急避妊薬を手に入れるために婦人科を受診する必要はないらしく、街中にある薬局で市販薬として手に入れることができるという。しかもその値段は千円程度なんだそう。日本では1万5000円するものが、中国では千円……なんなんだろうこの差は。

リミットは72時間。けれども、医師の処方箋なしでは手に入れることができない

 そもそも緊急避妊薬(通称・アフターピル)とはどんなものか。避妊せずに行われた性交、または、避妊手段が適切かつ十分でなかった性交(たとえばコンドームに穴があいていた、コンドームがずれていたなど)のあとに緊急的に服用するピルのことを、緊急避妊薬と呼ぶ。行為の後72時間以内に服用することで高い確率で妊娠することを防ぐことができ、日本では2011年から発売されるようになった。

 ではこの薬はどのようにして入手すればいいのだろうか。現状では、まず産婦人科など病院を訪れることが必須である。つまり、医師による処方箋なしでは薬を手に入れることはできない。誰もが薬局などで購入できる、いわゆる一般医薬品(OTC)ではない。

「えっ、緊急時に使う避妊薬なんだよね?」

 そう疑問に思う人も多いのではないか。土日祝など近隣の病院が休みだったら? どうしても72時間以内に病院に行くことができない事情があったら? 1万5千円というお金をすぐには用意できない人もいるのでは? 性暴力被害を誰にも言えない状況で、心身ともに傷ついていた被害者は受診をためらうケースもあるかもしれない。医療機関の少ない地域に住んでいる場合は? そうでなくとも女性の中には<婦人科へ行く>という行為をハードルが高いと感じる人が多い。それはなにも10代だけではなく、20代でも30代でも40代でも一定数いるのだ。婦人科受診のハードルを高いと感じている人たちの存在を見過ごしてはならないのではないか。誰もが気軽に手に入れることができないのなら、“緊急”の意味がない。

 実際、「日本では高くて手が出ない」「婦人科に行きたくない、誰にも知られたくない」と、海外サイト等で購入する人もいると聞く。SNSなどを通じ、個人間で売買されることもあるようだ(もちろんこれは違法だ)。だが、そのようにして手に入れた商品が安全かどうかはわからないし、それが本物の緊急避妊薬かどうかの保証もない。

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