映画『コレット』が韓国SNSで起こした運動にみる、社会を拓く力とは

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韓国社会が経験した二つの変化

 ひとつは、2016~2017年に韓国で起こった「ろうそく革命」と呼ばれる政変だ。職権乱用・機密文書漏洩・収賄などの疑惑が発覚した朴槿恵元大統領の退陣を求めた韓国の人々は毎週末、ろうそくを手にしてデモを行った。回を重ねるごとにろうそくの灯りは数を増やしていき、最終的には200万を超える史上最大規模の市民集会となって、大統領を退陣へと追い込んだ。

 韓国の人々は、この“ろうそく革命”によって、自らの手によって政権を倒すという成功体験を獲得したことになる。一人ひとりが力を合わせれば社会を変えていけるという可能性や希望とともに、自らが社会に参与しながら新しい時代を拓く重要性を、社会共通の意識として共有した出来事だったといえるだろう。

 もうひとつは、フェミニズムという観点から、「江南駅殺人事件」が落とした影も大きいだろう。2016年、ソウル・江南駅近くの共用トイレで当時23歳の女性が見ず知らずの男性に殺害された。犯人の男性は「女性なら誰でも良かった」と供述しており、韓国の女性たちには「殺されていたのは私たちだったかもしれない」と衝撃が広まった。

 この事件以降、韓国のSNS上には「#私は生き残った」というハッシュタグをつけた投稿が大量に現われ、フェミニズム運動は韓国全域へと急速に拡大していった。こうした社会現象は文学界にも飛び火し、ある女性の半生を描いた小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著/日本では2018年に筑摩書房から刊行)が多くの女性たちの共感を呼び、100万部を超えるベストセラーとなった。以後、韓国では多くのフェミニズム作品が生まれている。

 ある悲劇的な事件が、女性という性別を目がけて起こったからこそ、韓国の女性たちは“女性であること”を再認識し、連帯して声を上げることの重要性を自覚したのである。

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