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新紙幣の配慮と新技術がすごい! 紙幣のデザインができるまで

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「Getty Images」より

 さる4月9日、2024年度上期をめどに一万円札、五千円札、千円札を刷新すると麻生太郎財務相が発表し、約20年ぶりの紙幣一新ということで、大きな注目を集めた。

 新一万円札には、「日本の資本主義の父」と呼ばれる実業家・渋沢栄一。新五千円札には、津田塾大学の創立者・津田梅子。新千円札には、細菌学者である北里柴三郎の肖像が使用される。それまで慣れ親しんでいたお札表面の肖像が、新たな人物に変わるというニュースは、驚きをもって受け止められた。なかでも話題に上がったのが、そのデザインについて。額面数字のフォントなどからカジュアルな印象を受け、新紙幣のデザインイメージに違和感を覚えた人も少なくないようだ。

 日本の紙幣はこれまでも、偽造防止などを理由として、約20年ごとに新しいものへと変えられてきた。今回のデザイン刷新には、どのような意図があるのだろうか。

 そこで、大蔵省(現財務省)印刷局で紙幣の製造行政に約40年間携わっていた経験を持つ紙幣史研究家で、『お札のはなし–その歴史、肖像と技術』(印刷朝陽会)などの著書を持つ植村峻氏に、新紙幣のデザインについて聞いた。

紙幣に文化人が使われている理由は?

 まずは、刷新の主な変更点について語ってもらった。

「新デザインでは、肖像が現在発行されているお札の約1.3倍の面積になっています。これによって、使う人が識別しやすいようになっていますし、細かい線を組み合わせた精細な肖像を描けるので、偽造しづらいようになっています。

それから、パッと見ればわかると思いますが、額面金額のアラビア数字がうんと大きくなっているのです。このことで、外国人や高齢者でもわかりやすいお札になっています。また、指の感触でお札の種類を識別できるマークの形状や位置の変更といった、目の不自由な方への工夫もあり、様々な人に配慮された変更が行われています。

 機能面では、紙幣を識別するための固有の番号である記番号が、現行の最大9桁から10桁へと増えています。現在のお札のアルファベットと数字の組み合わせでは、129億 6千万枚刷ってしまうと、すべての番号を使いきってしまいます。ところが、今度の新しい紙幣では、数字と間違えやすい『I』と『O』を除いた24文字のアルファベット記号が、ひとつ増えているということで、記番号の組み合わせ方によっては、飛躍的な枚数まで刷れる可能性が出ました。これにより、発行枚数が増えても対応できるようになっているわけです。

 また、角度を変えると肖像が立体的に浮かび上がる最先端のホログラムや、今よりさらに高精細な模様のすかしの導入が発表されています。こうした新技術がたくさん入るというのが、今回のお札の改刷の特徴でしょう。これにより、偽造券がなくなるということを期待しているのでしょう」(植村氏)

 続いて、顔ぶれが一新された肖像の人選についても解説していただいた。

「誰の肖像を使うかということについては、以前からさまざまに議論されていますが、今回の改刷でも、文化人の肖像を使うということが基本方針として決められたのではないでしょうか。

 お札は、その発行順を表すために、ABCDEといったアルファベット記号で区別されています。現在発行されているのは、戦後5番目の発行なので、『E券』と呼ばれていますが、歴史的には、昭和59年に発行された福沢諭吉、新渡戸稲造、夏目漱石の『D券』シリーズから、文化人が主流になっていますね。現行の『E券』の肖像も福沢諭吉、樋口一葉、野口英世といった文化人であり、新紙幣でも文化人を使うことが踏襲されています。

 文化人が用いられるのは、一般国民が広く知っているということと、政治家ではどうしても好き嫌いがわかれてしまいやすいからです。いつも財布に入れて持ち歩き、毎日使うというものに、嫌われている人物を描くわけにはいかないわけです。ですから大多数の国民から尊敬され、嫌われていない人ということで選ぶとなると、やはり文化人になるのでしょう。

 今回は、渋沢栄一氏、津田梅子氏、北里柴三郎氏が選ばれましたが、誰もが認める業績があって、図柄のもとになる精巧な写真があるなどの条件が合致したということで、多数の候補者の中からこの3人が選ばれたのではないでしょうか」(植村氏)

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