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DVと児童虐待の密接なつながり指摘 身体的暴力だけではないDVの現状と課題は

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「Getty Images」より

 今年1月、千葉県野田市で小学4年生の女児が虐待死した事件の凄惨さに、多くの人が衝撃を受けた。この事件は両親が女児に一方的な虐待を加えていたという単純な構造ではないことが、徐々に明らかになっている。母親は父親の虐待を止めようと試みたこともあったようだが、反撃され暴力を振るわれた経験があったという。母親は父親の虐待を止めなかった“虐待加害者”であるが、同時に“DV被害者”の側面も持っていたのだ。

 DVと児童虐待は密接な関係性があり、両問題を分けて扱うべきではない。5月25日放送の『田村淳の訊きたい放題』(TOKYO MX)で弁護士の長谷川京子氏は、子供の問題は児童相談所、DVは配偶者暴力支援センターが管轄であるため、問題ごとに対応先が変わることや、両所の風通しが良くないため、密な連携が難しく事態の解決を遅くしていることへの問題意識を提示した。

 また、DVと児童虐待の管轄が別であるがゆえに、DV被害者がSOSの発信を躊躇してしまうというリスクも懸念されているという。長谷川氏は「児童虐待防止法に記されている心理的虐待の定義の中に、『同居する大人が虐待されている子供を放置することも虐待である』となっている。これは読み方によると、DV加害者が子供を虐待することを被害者が止められなかった時に、被害者も虐待加害者になることを意味しています」と説明する。

 加害者に支配されて意見することができなくなってしまった被害者が、子供への虐待を見過ごし、あるいは虐待に加担するなどして、DV被害者でありながら虐待加害者になってしまう。「DV被害から助けほしい」という気持ちより、「虐待加害者になりたくない」というという気持ちが勝ってしまい、ますますDVも虐待も発覚しにくくなる。これでは子供も救われない。長谷川氏は「虐待の構造をトータルに見て解決していく支援機関こそ必要。DVや児童虐待だけを(個別に)見て支援していては、本当の問題を解決することはできない」と、語気を強めた。

DV=身体的暴力という考えを改めるべき

 番組内では、家庭内における配偶者やパートナーからの暴力の防止や、被害者の保護・支援を目的とした法律「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(以下、DV防止法)の問題点も議論された。

 DVは身体的暴力・精神的暴力・性的暴力などから定義されるが、長谷川氏は「DV防止法の中では、暴力について『身体的暴力とその他の心身に有害な影響を及ぼす言動』というようにしか書かれていません」と指摘する。DV防止法はDV=身体的暴力という側面が強く、モラハラを始めとした身体的暴力以外の被害を受けている人の対応が不十分であると見る。裁判所に申し立てて、加害者が連絡をとることや住居に近寄らないことを命令してもらえる“保護命令”という制度は、身体的暴力には対応してもらえるが、精神的暴力や性的暴力では申し立てができない。

 加えて、憲法学者の木村草太氏は、保護命令には加害者に住居からの退去・住居に接近することを2カ月間禁止する“退去命令”という制度に関して「退去命令は『DVの加害者を家から追い出して安全に暮らせる』というイメージの名前なのですが、実態は“被害者引越し準備期間”みたいな制度です」と同制度の不備を指摘。加害者を被害者の住居から遠ざけることができる期間は2カ月しか設けられておらず、時間が経てば加害者はまた戻って来られてしまう。

 つまり、被害者はこの2カ月間で次の住居を見つけ、引っ越しの準備を済ませる必要がある。住み慣れた土地を被害者側が去らなければ解決できないという点も、全く理不尽だ。長谷川氏は「これまで守り抜いてきた生活の基盤を全部投げ捨てなければ、DV解決の一歩を踏み出せないのが、大きなハードルになっている」という。これは重要な指摘だろう。

 木村氏いわく、DV被害者に子供がいる場合、ますますDVから逃れることが難しくなる。無事に引っ越しを完了して逃げることができたとしても、加害者は子供の通っている学校を通じて接触してくる可能性があるため、転校を余儀なくされる子供の心理的負担も非常に大きい。このことも、被害者が加害者から逃げることに二の足を踏ませているようだ。

一時保護所の利用しづらさ、改善を

 DV被害者の逃げ場となる一時保護所の利便性の低さも見過ごせない。警察庁の調べによると、2018年度の「配偶者からの暴力事案等の相談件数」は7万7482件で過去最高を記録したが、加害者から身を守るための“一時保護”の件数は減少傾向にある。厚生労働省の「婦人保護事業の現状について」によると、2006年に一時保護された人の数は1万1837人だったのに対し、2016年では8642人だった。

 DV件数は増えているが一時保護件数が増えない原因のひとつに、一時保護所内では携帯電話を所有できなかったり外出が規制されていたりなどの厳しい規則があることが挙げられる。長谷川氏は「一時保護所で携帯電話を使っているとGPSで居場所がバレてしまうから」と、規則の理由を説明。だが携帯電話は今やオモチャでもなんでもなく生活必需品だ。携帯電話がなければ、親族や友人知人との連絡も取れず、引っ越しの手続きなどでも不自由だろう。それを手放すことは、被害者に心理的負担がかかる。長谷川氏は被害者の安全と自由を両立させることの難しさを語った。

 しかしこの放送後、厚生労働省は一時保護所内での携帯電話の使用禁止を見直し、早ければ来年度から一部で使用を認めることを検討していることを公表した。一時保護を受けるDV被害者の心理的ハードルを下げ、少しでも多くの被害者が解決に向け動けるよう、積極的な改善が必要だろう。

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