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トランプの「ディール」を崩せなかった安倍外交、日本の期待は空振りに

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写真:代表撮影/ロイター/アフロ

トランプ大統領の一人勝ち

 来年の大統領選挙を控えた米国のトランプ大統領と、この夏の参院選に合わせてダブル選挙も画策する安倍総理。ともに大事な選挙を控えた両首脳が4月に続いて再び会談しました。今度は令和最初の国賓としてトランプ大統領を東京に招き、上にも下にも置かない異例の接遇でもてなしました。

 外交交渉という観点から見ると、今回のトランプ訪日は、トランプ大統領の一人勝ちの印象を強めました。羽田空港に降り立ったときも両国国技館に来場したときも、国民は「怖いもの見たさ」もあったかもしれませんが、万雷の拍手で迎え、歓迎一色に染まりました。まるで「スター」の来日のようでした。

 トランプ大統領はワシントンを発つ前から、新天皇との面談など、歴史的な栄誉を米国民にアピールしていましたが、日本政府から最大限の接遇を受けた「成果」も米国民に最大限アピールすることができます。選挙戦を前に、大きな得点を得たことになります。

 本来、「おもてなし」の心は、相手に見返りを求めない無償の接待で、お客様に喜んで帰っていただければ、それ自体大成功と言えるのですが、4月の首脳会談でこの5月にも貿易交渉の結論を出す可能性をトランプ氏からチラつかされ、危機感を持った安倍総理は、「無償の心」ではなく、接待の見返りを期待して異例のもてなしをしました。つまり、自分の選挙にも協力してほしいというものです。

 前回の首脳会談後、安倍総理は「夏には大事な選挙があるので、その前に貿易交渉の結論を出すのは勘弁してほしい」と頼んだと一部に報道されています。そのためにあらゆる手段を講じ、トランプ氏に満足してもらって「ディール」先延ばしを依頼したと言います。実際、トランプ大統領から多くの問題は選挙後の8月に発表するとの言質を得ました。

 トランプ大統領にしてみれば何の負担にもならない「サービス」で、その裏できっちり貿易交渉は進めるぞ、との「ディール」は崩していません。日本としては多少なりとも攻撃の手を緩めてもらえないかとの期待はあましたが、それはかなわなかったようです。

貿易交渉で米は譲らず

 トランプ大統領にとっては、令和最初の国賓として招かれた栄誉と、貿易交渉の「ディール」は別物のようです。トランプ大統領は「貿易問題の解決が最大のテーマ」と言ってはばからず、接待の最中にも日本の農業開放、自動車問題を協議すると明言していました。そして、彼の「成果」とは中国との貿易戦争で疲弊する米国農業を喜ばせる結果を得ることと、米国自動車業界を復活させるべく、輸入自動車を削減することです。

 今回、トランプ大統領はこれらの問題の多くを8月の発表まで延ばすと言いましたが、この問題で米国が譲歩するとは一切言っていません。自動車に関しては対米黒字を減らし、米国の自動車業界の生産雇用を圧迫しないように、需給調整することを念頭に置いています。基本は日本車メーカーに米国での現地生産化へのシフトを期待しますが、すぐにその成果が上がるわけではありません。

 現地生産化で調整できない分は、「自動車関税」の脅しをちらつかせながら日本の対応を見るというもので、日本政府は現地生産の拡大にともなって、いずれは輸出をある程度減らせるとの説明はしているようです。それでも米国が期待するほどの輸出減にはならないので、暗黙のうちに日本の対米輸出の自主調整を期待している節が見られます。

 昨年1年間の日本車の対米輸出は175万台ですが、米国からは一時100万台の削減要請があったと言われます。簡単に対応できる数字ではありません。これを受ければ、自動車業界はもちろん、日本経済全体に大きな打撃となり、政権をも揺るがしかねません。農業分野での要請も、日本の「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が限度」では納得せず、それ以上の関税引き下げ、市場開放が求められているといいます。

 令和最初の国賓としての招待も、ゴルフ接待、大相撲観戦も、このトランプ「ディール」を崩すまでには至らず、日本の期待は空振りに終わった感があります。

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