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元農水次官の長男殺害を「立派だ」と賞賛…「引きこもりは悪魔の予備軍」と偏見を増幅させる報道続く

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『ひるおび』公式サイトより

 今月1日、同居する44歳の長男を包丁で刺し殺害したとして逮捕された、元農林水産事務次官の熊沢英昭容疑者。長男はその日、隣接する小学校で開かれていた運動会の音に腹を立て、熊沢容疑者と口論になったという。

 警視庁の取調べに対して容疑者は「川崎市の20人殺傷事件が頭に浮かび、息子が周囲に危害を加えないようにしようと思った」という主旨の供述をしていることもわかった。川崎市登戸の殺傷事件では、引きこもりであったとされる岩崎隆一容疑者が私立カリタス学園に通う児童を中心に殺傷。熊沢容疑者の長男も無職、引きこもり状態だったと伝えられている。

 熊沢容疑者の長男はしばらく一人暮らしをしていたが、5月下旬に実家へ戻ってきたばかりだったようだ。以前から長男は家庭内暴力を振るっており、熊沢容疑者の体にも複数のアザがあったという。

 この事件を受けて、SNSでは容疑者への同情や賛辞が増え続けている。「正当防衛にしてほしい」「容疑者は長男の凶行を防ぎ、罪のない小学生を守った」「親としての責任を果たして立派」「“ひとりで死ね”の実践だ」等の声が、信じられないほど多いのだ。

 その背景には、家庭内の問題をどう解決して良いのかわからない、行政など公的支援を頼りに出来ないという不安感が横たわっている側面もあるだろう。だが、自分の息子であったとしてもその命は親のものではなく、奪ってよいわけがない。殺人が唯一の解決法になり得る社会の側にこそ問題がある。

 「社会に迷惑をかける人間は処分すべき」とでもいうような殺人の正当化は、2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件のような優生思想までも肯定する社会に導いてしまいかねない。

 また、「引きこもりは危険因子」と決め付ける、慎重さを欠いた報道も続いている。登戸で凶行に及んだ岩崎容疑者は自ら命を絶っており、事件の詳しい動機はわかっていない。テレビ報道では連日のように犯人の動機を探っているが、特に強調されているのは岩崎容疑者が「引きこもり」であったという点だ。

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