6月28・29日に開催されるG20大阪サミットを前に、現代の遊郭街・飛田新地が期間中の営業休止を決定した。その理由についてさまざまな憶測が飛び交い、Twitterでトレンド入りするほど話題になった。
飛田新地料理組合は、メディアの取材に対し、「期間中は大規模な交通規制の影響で相当な混乱が予想され、従業員の出勤にも影響が出る恐れがある。組合としてもG20大阪開催の成功、そして2025年の大阪万博につなげてほしいとの思いから、営業を取りやめて地域の警備に人員を割くことにした」と答えている。地元民や働く女の子たちへの配慮ということらしい。
売上好調も、旅行客の撮影に頭を抱える
観光地としても有名な飛田新地は、昨今外国人旅行客の急増で売上も好調。その一方で、観光客による撮影行為や写真のネット投稿がやまないなど、悩ましい問題もある。
大阪市西成区のせまいエリアの一角に、160軒ほどの木造住宅がひしめく。重厚な屋根瓦と玄関横の出格子は、江戸時代の揚屋を彷彿とさせる。貴重な建築様式と情緒ある町並みを残すことから、撮影場所としても格好のスポットだ。しかし、飛田新地は原則「撮影禁止」で、カメラを向けようものなら関係者に厳しく叱責される。ここでは訳ありで働く女性従業員も少なくないからだ。両親に内緒で働いている子もいれば、DV夫から逃げてきた女性もいる。なかには「宣伝になる」と考えるスタッフもいるが、おおっぴらには写真撮影は認められないというのが店側の立場だ。
シングルマザーでも働きやすい環境
副業OL、学生、出稼ぎなど、飛田新地で働く理由は人それぞれ。シングルマザーの応募者も少なくない。飛田新地には提携する専用託児所があり、利用は24時間OK、料金も1時間600円からとお手頃の価格。飛田新地の求人サイトを見ても、母子家庭でも安心して働ける点を売りにした広告が目立つ。子どもの世話をするのは資格を持つ保育士たちで、食事はもちろん、おむつ交換やお昼寝、夜の就寝なども面倒を見てくれるらしい。託児所費用をお店負担にしてくれるところもある。
福利厚生に加え、短時間でも効率よく稼げるメリットがあるからこそ、シングルマザーの応募も多いのかもしれない。厚生労働省の「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査の結果」によると、シングルマザーの就業形態は43.8%がパート・アルバイトなどの非正規雇用だ。正社員だと日中の定時勤務が原則となり、働き口は限られてくる。しかも、子どもが急に熱を出しても欠勤や早退を申し出るのは難しい。何かと融通が利くパート・アルバイトで職を得るパターンが必然的に多くなる。
非正規雇用は正社員と比べ、収入が低いのがネックだ。先の調査で明らかになった、母子世帯と父子世帯それぞれの年収を比較すると、「母子世帯:243万円」「父子世帯:420万円」と大きな違いが見られた。小さな子どもの面倒もみながら、母子が生活できるだけの収入を稼いでいかなければならない。シングルマザーにはそういう厳しい現実がある。
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