DV加害者の特徴や傾向は一括りにできない…束縛や不機嫌な態度に潜む“暴力性”とは?

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難しい問題を易しく解説してくれる中村先生

暴力によって負の感情を発散し、メンツの回復をはかる

清田 暴力と男性性というのは、実際どのように結びついているものなのでしょうか?

中村 「男らしさ」が暴力の直接的な原因になっているというわけではありませんが、加害者たちの語りに耳を傾けてみると、そこには男性に特徴的な習慣や思考様式が関与していることが見えてきます。

 例えば私が加害者臨床のグループワークで話を聞いたDV男性(38歳・会社勤め・2児の父)は、ある日の夕食時、妻が何気なく話した「今月苦しいのよね」というひと言に激昂し、「なんだと!」と平手打ちをしました。また別のときには、食事で望んだおかずが出てこなかったことに腹を立て、「こんなもの食えるか!」と妻を怒鳴りつけた。

清田 えええ! そんなことでキレちゃうんですか……。

中村 彼いわく、当時はリーマンショックなどの影響で給料が下がっており、そのことを日頃から気に病んでいたようです。そういう中で、妻の言葉が「あんたの稼ぎが少ないから」という叱責に聞こえてしまった。おかずの件に関しても、妻から馬鹿にされたような気分になり、反射的に怒鳴ってしまったそうです。

清田 かなりこじれた受け取り方にも思えますが……彼としてはプライドが傷つき、それが激怒につながったというわけですね。

中村 これ、きっかけは妻の言動だったかもしれないけど(内容的にもなんの問題もない)、問題は明らかに夫側にありますよね。ネガティブな感情が基盤にあり、それが偏った受け取り方を生み出している。「稼ぎが少ない」という叱責に聞こえたのも、夫が勝手に作り上げた文脈なわけですから。ただ、これは他のDV男性にも共通する構図で、ここに関与しているのが、序列や優劣の意識、領域(なわばり)の争い、女性蔑視、所有意識、力に対する欲望、メンツへのこだわり……などといった男性に顕著な傾向、つまり男らしさの問題です。

清田 なるほど。夫がキレた理由は、下に見ていた妻から「稼ぎ」という男の領域に踏み込まれ、夫としてのメンツをつぶされた──みたいなことだったのかもしれませんね。ただ、機嫌を損ねるだけならまだ理解できますが、それがなぜ暴力という形で発露してしまうのでしょうか?

中村 ごく簡単に言えば、暴力が選択されるのは「問題解決」のためです。先の夫で言えば、やり場のない怒りがわき起こったことが“問題”なわけですが、これを解決するためには、怒りの感情を発散させるか、つぶれたメンツを回復させる必要がある。

 DVにおける暴力には「自己顕示的暴力」と「道具的暴力」の2種類があって、それはこのようなイメージになります。

・自己顕示的暴力──自己の怒りをしずめるために振るわれる暴力。それ自体が一種のカタルシス(浄化)となっている
・道具的暴力──相手の行為を修正させようとして使用される暴力。支配や服従のための手段であり、体罰や懲罰がこれに当たる

清田 なるほど……このような分類があることは初めて知りましたが、確かに夫は、暴力によって感情の発散やメンツの回復が達成されたような気がしますね。

中村 それともうひとつ、暴力を用いるとすぐに得られるものがあります。それは「勝つ」ということです。例えば口論や議論では女性側が優勢に立つケースも少なくありませんが、肉体的な優位性においては男性に分があることが多い。DV男性たちはそこに頼り、自分が男らしいと感じられるやり方で状況を切り抜け、女性を支配するわけです。

清田 暴力は勝つための手っ取り早いツールでもあるわけですね。

中村 でも、DV男性たちがどんな場面でも暴力という手段を選ぶかというと、決してそうではありません。彼らは妻や恋人(虐待の場合は子どもや高齢者)だからこそ暴力を振るっている。つまり「相手を選んでやっている」わけです。

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