DV加害者の特徴や傾向は一括りにできない…束縛や不機嫌な態度に潜む“暴力性”とは?

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男らしさの矛盾を解消する「正当化のロジック」とは

清田 つまり、腕力で勝てる相手、絶対にやり返されることがない相手だとわかった上でやっていると?

中村 そうですね。ただ、本人にはその自覚がないケースが多く、DV男性たちの中には「親密な相手だからこそ殴ったのだ」「家族だから犯罪には当たらない」などといった身勝手な理屈や甘えの意識が内在しています。しかし、自分よりも力の弱い者に暴力を振るうことは一般的な男らしさの規範に照らすと“卑怯”ということになりますよね。そこで必要になってくるのが「正当化のロジック」です。そうしないと自己矛盾に陥るからです。

清田 暴力という“男らしい”行為をしているのに、実態としては弱い者を選んでいるという“男らしくない”状況になっている。その矛盾を埋めるための理屈が必要になってくる……何やら嫌な予感しかない話ですね。

中村 DV男性たちが語る「言い訳」や「正当化」にまつわる言説に関しては、これまで国内外で様々な研究がなされてきたし、私自身も力を入れて取り組んでいる分野のひとつです。大雑把に言えば「向こうだって悪い」「俺が悪いわけじゃない」「仕方ないことだった」「騒ぐほどのことじゃない」「これは家族の問題」などと暗に主張して体裁を取り繕おうとするためのものなのですが、より詳しく見ていくと次のように分類できると思います。

(1)責任の転嫁──相手の落ち度をあげつらい、「相手が殴らせた」などと責任転嫁をはかる。また「ケンカ両成敗」のような構図を主張し、暴力の責任を引き受けない

(2)意志の否定──アルコールやストレス、過去のトラウマなどなんらかの「外部要因」を持ち出し、「自分にはどうすることもできなかった」と自己責任を否定

(3)被害の否定──単なる痴話ゲンカだと主張し、暴力であることを認めない。あるいは、普段は仲が良いことをアピールし、相手がDV被害者であることを否定

(4)非難者の非難──「これはケンカであってDVではない」「家族のことだから問題ない」「他人の家のことに口を出すな」と外部からの批判や介入を非難する

(5)正当性の主張──間違ったこと、失礼なことをしたのは相手であり、自分はそれを正すために制裁を加えただけだという“正義の暴力”であることを主張

(6)役割意識の主張──「男とはこう振る舞うものだ」「一家の主として叱ったまでだ」など、社会に流布する役割意識や男らしさの規範に寄りかかり、自己責任を回避

清田 これって痴漢や性暴力の加害者が口にしがちな言い分にも共通する話ですよね。男の性欲を「自分の意志ではどうにもならないもの」にすることで「だから仕方なかった」と暗に主張したり、「欲情を誘う格好をしていた女性側も悪い」などと被害者にも非を求める物言いをしたり……そういうことは“あるあるレベル”で起きていると聞きます。

中村 虐待する親なんかも類似のロジックを用いがちです。これらは加害行為を起こす前から事前に準備された動機として存在している場合もありますが、自分の立場をよくするために事後的に用意された説明である場合も少なくありません。また厄介なことに、当人にその区別がついていないことが多く、また周囲や社会、ときには被害者自身もそのロジックに一定の理解を示してしまうことがあり、それが加害や被害を見えづらくしてしまう。

清田 確かに……。我々が話を聞かせてもらった女性の中にも、「夫がキレたのは私が何か悪いことを言ったせいではないか」「束縛されるのは苦しいけど、彼氏を安心させてあげられない自分も悪いのではないか」などと自分を責めてしまっている女性も少なくありませんでした。

中村 このように、被害者が抱く自責の念なども巧みに利用しながら、「自分は暴力的な加害者というわけではない」「正当な意味や理由があって暴力を振るったまでだ」と自己の地位を保全するための説明行動を「中和化」と呼びます。

清田 嫌なエクスキューズだと感じる一方で、そういった論法自体は自分自身も用いたことあるかも……という思いも起こり、なんだか複雑な気分になります。後編では、中村先生が暴力とジェンダーの問題に興味を持ったきっかけや、加害男性の更生プログラムに関するお話などをうかがっていけたらと思います。

<後編へ続く 後編は23日公開予定です>

 

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