そんな福居氏を慰留したのが当時は係長だった藤井社長であったという。経営再建の道を模索していた藤井氏は新しいことに挑戦する気概をもった福居氏を評価していた。
藤井氏は1995年に龍角散の社長に就任。その後、福居氏の提案した服薬ゼリーの企画は「おくすり飲めたね」という商品に姿を変え、服薬を嫌がる子どもに悩む親御さんの間で空前の大ヒットを記録する。
しかし、そんなヒット企画を手がけたのにも関わらず、福居氏は左遷の憂き目にあってしまう。古参役員の巻き返しが始まっており、事業再編に取り組む藤井社長への反発が起きていたのである。
パソコンを開くことも、本を読むことも許されず、目の前の席に座っている上司が本社の人間との電話で「まだ辞めない」「まだいます」と話しているのが聞こえてくる毎日だったという。
だが福居氏は社内イジメに屈せず、自身に足りない製剤の知識を補うため大学院に通ったうえ、英語で論文を書くために英語学校にも通った。ちなみに、英語のスキルを磨くことになったのは、日本語で論文を書くと会社にバレてしまうからであるという。
そんな日々が続くなか、藤井社長が問題のある役員を罷免し、福居氏は本社に戻ることができた。福居氏は英語で5本の論文を書いて博士号を取得、2008年には龍角散の歴史で初めての女性の執行役員にもなった。
藤井社長にいったいなにがあったのか?
今回問題になっている不当解雇およびセクハラ問題に関わった人物と、女性差別に苦しむ福居氏の能力を高く評価して仕事をサポートした人物が、同じ藤井社長とは思えない。180度違うこの人物像はいったいなんなのか。
裁判も始まっていない現段階ではなんともいえないが、もしも元法務部長の訴えが事実だとすれば、藤井社長はかつて自分が追い出したはずの古参役員のような人物に成り下がってしまったのだろうか。
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