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「同意なき性交は犯罪ではない」現実を知り、動き出した世論

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「Getty Images」より

 相次ぐ性犯罪への無罪判決に波紋が広がっている。4件のうち2件は実父から未成年の娘へのレイプ。司法判断をめぐって議論が深まっている。

 性暴力被害者当事者団体スプリングは5月13日、法務省および最高裁判所へ要望書を提出。性犯罪が不同意のみで成立するよう、刑法の見直しや、裁判官に性暴力の実態と精神医学の知見を踏まえた研修の徹底を要請した。

 同団体が中心となって性犯罪における刑法改正のために集めている署名も、もう少しで4万5000に達しそうだ(6月7日現在)。

 発端となった名古屋地裁岡崎支部による娘を性的暴行した父親への無罪判決は、検察側により控訴された。改めて二審で争われることになる。

  実の娘をレイプし続けた父親の無罪判決

 一連の動きは、実の娘を中2の頃からレイプし続けてきた父親に、今年3月26日に名古屋地裁岡崎支部が下した無罪判決に端を発した。2017年、愛知県で当時19歳だった娘と性交したとして準強制性交の罪で起訴されたのがまさかの無罪になり、物議を醸した。

 準強制性交罪の成立要件のひとつ、同意がなかったことは認められたものの、もうひとつの要件である抗拒不能−−意思決定が奪われ、抵抗が著しく困難になるほどの状態−−ではなかった、というのがその理由だ。

 しかし、中学生の頃から父親に犯され、抵抗すると殴る蹴るといった虐待を受けていれば、恐怖と苦痛から抵抗する意思さえ奪われてしまっていてもおかしくない。

 被害者の女性は勇気をふりしぼり、父を告発した。しかし、裁判所は女性が抵抗できなかったことを認めず、無罪にした。

 ネットでは「父親が子どもに性暴力をふるうのを認めているような判決」「これでは同じことが繰り返されてしまう」「被害者が声を上げられなくなる」といった批判の声が上がり、各地で抗議デモも行われた。

改正前の性的虐待はさかのぼって処罰できない

 実の娘を中学生の時からレイプしていた父親が無罪釈放になる日本の法律は、いったいどうなっているのだろうか。13〜14歳の子どもを性的虐待していたかどで処罰することはなぜできないのだろうか。

 調べてみたところ、親から子どもなどへの性的虐待を処罰する「監護者性交等罪」という刑罰が、2017年の刑法改正(110年ぶり!)で新設されている。監護者性交等罪では18歳未満の者に対して、親などの監護者がその影響力に乗じて性交等に及んだ場合は、強制性交と同様、処罰される(刑法179条2項)。ただ、本件では娘である被害者が当時19歳で、18歳を超えていたため、該当しなかったのだという。

 さかのぼって適用できないのかという疑問がわいたが、日本弁護士連合会・子どもの権利委員会委員を務める安孫子健輔弁護士のツイッター解説によると、刑罰法令の遡及適用は認められないのだそうだ。

 未成年ということでいうと、児童福祉法という法律もある。児童福祉法34条1項6号は「児童に淫行をさせる行為」を禁じていて,違反すれば10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられる(児童福祉法60条1項)。

 しかし児童福祉法も、対象となる「児童」は18歳未満の者を指す(児童福祉法4条1項)。

 安孫子弁護士は、「18歳になる前の被害を立証する必要があり、難しかったのではないか。本件では被害者が19歳になっていたので適用はされなかったものの、日本では18歳未満の未成年への性暴力を処罰する立法的な手当ては一応はなされている」と解説している。

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