「同意なき性交は犯罪ではない」現実を知り、動き出した世論

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子どもの証言は信用できない?立証が難しい家庭内性犯罪

 性暴力事件無罪判決は本件のほかにも、今年3月に3件、相次いだ。

 そのうちの1件、静岡地裁のケースも、実父による12歳長女への約2年にわたる強姦だったが、「唯一の直接証拠である被害者の証言は信用できない」との理由で無罪になった(4月10日までに検察側が控訴)。

 家庭内というのは外からはうかがい知れないブラックボックスだ。そのなかで親から子に虐待や性暴力がふるわれた場合、もう片方の親が助けようとしない限り、子どもの証言だけでそれを立証するのは難しいだろう。子どもは傷ついて混乱しているだろうし、まだ状況をはっきりと説明する力も備わっていないことだろう。でも、それで子どもの言うことに信憑性がないと取られてしまうと、救えたかもしれない子どもをまた地獄に送り返すことになってしまう。

 一方、残り2件の性犯罪無罪判決は大人の男女間の係争だったが、いずれも同意のないこと、抗拒不能は認められたにもかかわらず、被告人男性側に「故意=罪を犯す意思」が認められなかったということで無罪判決が出ている。

子どもの保護が立ち遅れている日本の法律

 抗拒不能といい、故意の認定といい、日本の性犯罪の成立要件は厳しすぎるのではとの声が上がっているが、海外ではどうなっているのか。

 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが2018年に行った10カ国(日本、米国、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、韓国、 台湾)の性犯罪に関する規定の調査によると、どの国も日本より進んでいることが判明したという。

 多くの国が暴行・脅迫という要件をなくし、同意なき性行為を性犯罪としている。また、信頼関係や依存関係からイヤと言えない関係を悪用した場合もレイプが成立するとしている。

 スウェーデンでは過失レイプ罪も新設。相手が自発的に性行為に参加していないリスクがあると気づくべき状況にいながら行為を続けた場合などに4年以下の拘禁刑に処される。

 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、多くの国で子どもへのレイプは大人へのレイプより重い処罰が課されているのに、日本では子どもに対するレイプの重い処罰がないことを指摘。しかも日本の性交同意年齢(=同意の有無にかかわらず性行為をしたら犯罪になる年齢)が13歳と、イギリスの16歳、フランスの15歳と比べ、驚くほど低く設定されていることを指摘し、改善を求めている。

 2017年の刑法改正で導入された18歳未満の未成年への監護者性交等罪 (刑法179条) に関しても、「監護者」の範囲は狭く、「監護者」にあたるのは、親権者、後見人など法律上の監護権を有する者や、養護施設の施設職員など。年長者や教師、習い事等の指導者が地位や権限を利用した場合の性行為は、犯罪とされていないのだそうだ。

 性暴力は上下関係につけこまれて起きるケースが多いのに、「監護者」の定義がそんなに狭くては、法の網目から抜け落ちてしまうのではないか。ヒューマンライツ・ナウでは子どもに対する地位を利用した性行為の処罰対象化を勧告している。

 性暴力は存在しているのに、性犯罪をなかなか立証できない……。被害者が子どもの場合は特にそうだ。話の信憑性が疑われて泣き寝入りするケースが多い。被害者が大人の場合も、警察で取り合ってもらえなかったり、起訴できなかったりして、一人で苦しみを抱え込み、PTSDやうつ病に苦しむ人も少なくないという。

 しかし今回、名古屋地裁での娘を強姦した父親の無罪判決、および一連の無罪判決がきっかけとなり、ようやく世論が動き出した。抗議デモをはじめ、被害者団体や人権団体がアクションを起こしている。声なき声が、少しずつだがうねりとなりつつある。

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