本当に日本の若者は留学していないのか?
内閣府の「子供・若者白書」をみると、文部科学省作成の「日本人の海外留学状況」のグラフが掲載されている。それによると、2004年にピークを示してその後は減少傾向にある。しかし、そのデータは短期の留学を含まないものなので、実態をよく表しているとはいいがたい。
文部省ではもうひとつ、海外留学状況の指標を持っている。(独)日本学生支援機構が調査した、日本の大学や専門学校などが把握している日本の学生の海外留学状況をみると、これが大幅に増えているのである。2009年に3万6302人だったのが、毎年右肩上がりに増えていき、2017年度には10万5301人と2009年の3倍近くに膨れ上がっているのだ。
内訳をみると、単位取得に通じる1カ月以内の短期留学が半数以上を占めている。実際は、短期であれば学校に届け出ずに夏休みや春休みを利用して個人で留学する学生も多い。また中高生の留学プログラムや、社会人になってからの語学留学や大学院などへの学位取得の留学なども加えたら、かなりの数になる。
では日本の若者は海外旅行に行っていないのか?
留学よりも、日本人の海外旅行離れについて耳にする機会が多かったかもしれない。海外旅行に関する指標のひとつに、出国者数がある。20代の出国数は、1996年には過去最高の462万9000人を記録したが、2017年には304万5000人まで下がった。
これをそのまま「若者の海外旅行離れ」と取ると勘違いしてしまう。20代の人口が単純に減っているからである。1996年が1883万人だったのが、2017年には1192万人まで減少している。
こういった場合、20代の人口を分母、出国者数を分子として、20代の出国率をみることで、はじめて正しく状況が把握できるようになる。1996年の20代の出国率は24.6%であったが、2017年には出国率25.5%となっている。リーマンショックの2008年には18.4%まで下がっていたのは事実だが、その後見事に回復している。つまり若者は海外旅行に行っていないわけではない。
日本の若者は「内向き」か?
さて、調査というものは、どこを抽出するかで大きく結果が変わってくる。いくつか複数のデータを合わせて見る必要があるが、それらが相反している場合もある。
若者は内向きなのだろうか? 留学に関しては、冒頭に引用した調査では3割のみが興味ありとの答えだったが、6割が興味ありと答えているデータもある。留学の件数は、全体として増えているようである。
海外の若者よりは国内志向なのかもしれないが、いろいろなデータを見ると「内向き」と言い切るほどではない。
また、若者世代が日本のなかでも特別内向きかというと、それは違う気がしている。日本人でパスポートを持っているのは4人に1人。必ずしも海外旅行や滞在が好きでパスポートを持っているわけではないかもしれないが、海外に行くことがある人は4分の1程度ということである。そこからすれば、20代の出国率が出国率25.5%、留学したい10~20代が32.3%というのは妥当な数字だろう。若者だけが内向きなわけではない、日本全体の割合と変わらないということだ。
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