2.5次元舞台からTGCのショーまで! 世界を視野に活躍する女性殺陣師の表現とは!?

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女が殺陣をやるということ

――数少ない女性の殺陣師として苦労されたこともあったのでは?

兼田 私が始めた当時は、本当に女性で殺陣をやっている人がいなくて、大勢の男性の中で女性一人がやっているという感じでした。私は16歳から演劇の方でアクションをやっていたので体は動く方だと思っていたのですが、やっぱり体のつくりが男性とは全然違うわけです。

切っ先を相手の喉元に向けるのが刀の基本的な構えです。私は身長147センチと女性の中でも小柄なので敵役をかなり見上げる形になりますし、私の喉元の位置に合わせて大柄な男性役者が腰を落として合わせてくれないとできない(笑)。それが美しいかという疑問は自分の中で残ります。あとは筋肉とか腕力の面ではどうしても男性に劣ってしまうので悔しい思いをすることもあります。

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――それでも最近少しずつ女性で殺陣をやる人も出てきています。

兼田 殺陣師という立場はまだ少ないですが、殺陣をやる女性は、最近の漫画やアニメ、ゲームの影響で、その流れに乗って少しずつ増えてきていますね。刀や和の文化が注目されるのは嬉しい反面、基礎を踏まえないで流行りに乗っているだけの人は見ていてわかりますし、それは負けていられない、抜かれたくないという気持ちが増してきます。だから最近も、基本的なところに立ち返って体重の掛け方は何対何がいいとか、こういう時はこの刀の位置が美しいとか、一から勉強し直しています。鴉のメンバーにも協力してもらって、真っ向というまっすぐ斬るだけの振りを何時間も練習するなど、大切な基本を見直している最中でもあります。

――女性が殺陣師として現場に入るメリットは何でしょうか?

兼田 私に関しては、自分が役者としてのキャリアもありますので、単純に刀の構え、型だけでなく、登場人物の感情表現に沿った殺陣を付けるようにしています。武器を持つのは憎しみなのか、人を守りたいのか、本当は戦いたくないけどやらざるを得ない立場に追い込まれているのか、いろいろな感情の機微があるはずで、それを踏まえて表現していくやり方は、自分の女性らしい繊細さにもつながっていると思いますし、それが新鮮でよかったという役者さんは男性でも多いですね。

演出家・劇作家の兼田玲菜として

――6月22日、23日に公演される『今鳴キ鴉ヨ、モウ笑エ』はどんな舞台になるんでしょう?

兼田 昨年から半年くらいかけてカナダ、ドイツを回った凱旋公演となります。私の作る芝居は、殺陣や和の衣装を使いながらも、現代的なテーマを取り入れていることが多いんですが、今回も「さとり世代」というのを盛り込んでいます。主人公は私が演じる竜胆という女の子で、本家の当主で何不自由ない生活を送っており、周囲に過保護すぎるくらい甘やかされているんです。ごはんは食べさせてもらい、服も着せてもらい、自分の誕生日に何を食べたいのかさえ家族に決めてもらう、みたいな奇妙な家族です。それが当たり前で、自分の意思なんか何も持たずにやってきた井の中の蛙なんです。そこに代表の亀山博昭演ずる罪人が現れて、一族の暮らしや竜胆自身にゆさぶりをかける中、彼女の心に訪れる変化を描いています。実は私自身、どっぷりゆとり世代なのですが、周囲のゆとりさとり世代の子たちを見て思うところを表現しました。

――海外での反響はいかがでしたか?

兼田 とにかく面白い!と全公演観に来てくださった方もいらっしゃいました。何度も見るとその度に違う視点で見られて発見があったと言われましたね。海外ではナレーション的な部分を字幕で流し踊りと動きで見せる演出にしているんですが、ダンスで表現した部分を美しいと評してくださる声もありました。通訳さんを通じて直接声をかけて感想を伝えてくださる方も、SNSで感想をアップしてくださる方もいて、目に見えて好意的な反響がわかりました。

特にドイツでは前回も公演をしたのですが、その時のテーマはLGBTだったのですね。私が演じる主人公が男嫌いの男勝りな乞食で、亀山が演じるのが女装して芸者をやっている男性という設定で。愛情とセクシャリティの間の葛藤を表現した内容だったのですが、ちょうどドイツで同性愛の結婚が認められたおめでたい時期でもあり、評判が広がって、ドイツ国内のLBGT研究者の方たちが大挙して観にきてくださるということもありました。

――日本公演にあたって、何か新しい演出などは加わりますか?
兼田 今回初めて日本語のセリフ劇にします。海外公演では言葉の壁を超えて感動を伝えていきたいという気持ちもあって、基本は無声芝居にしていたんですが、せっかく日本でやるならわかりやすくという団員からの要望がありまして。あと、私は個人的に「みんなで幸せに暮らしました」的なハッピーエンドが好きじゃなくて、これまでの芝居もエンディングで突き放して終わり、あとは観客の想像に任せるというような感じにしていたんです。海外ではそれでも好意的な評価を得られていたんですが、日本人ならみんなに幸せになって帰ってもらう方がいいんじゃないかと主張するロマンチストな男たちがメンバーの中に多いので、エンディングも変える予定でいます。

殺陣集団・鴉の公演は基本的に海外での上演を中心に企画されるので、日本での公演はこれが最後になるかもしれません。そのつもりでやりますので、ぜひ観にきて欲しいですね。

トータルで表現する

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――公演の衣装は大変きらびやかで目を引きますね。

兼田 実は全部私が作っています。デザイン画を描くだけでなく、切って縫って貼って……という作業まですべて。一族でお揃い感を出す意味もあって同じ布を使っていますし、殺陣の動きやすさにも配慮しています。メンバーの個性にも合わせていて、この人は美脚なので脚を見せるデザインにしよう、この人は可愛らしい顔をしてるので衣装に羽をつけよう、なんて(笑)。最初は海外公演をするなら低予算で済ませることが勝負、みたいな感じで始めたことなんですが、気が付いたら大道具、小道具、演出、照明、稽古場の手配からメンバーの飛行機の予約まで全部私がやっていて……。これはダメだと思って、少しずつメンバーに振ることにしたんですが、衣装は他の人にやらせるより自分がやるのが一番だとわかったので、未だにやっていますね。

――衣装のデザインで工夫するポイントは?

兼田 伝統的な和だけにこだわらず、いろいろな要素をミックスしていくのが好きです。一時期は他の国の民族衣装、チャイナドレスとかサンバの衣装なんかと着物をミックスするデザインに凝っていました。和洋折衷みたいな創造をしていくのが好き、得意なんだと思います。

――和の装いはふだんから生活に取り入れていらっしゃるんですか?

兼田 私、実は「ベスト足袋ニスト」という肩書きも持っているんです(笑)。足袋の生産で有名な埼玉県行田市の開催したコンテストで優勝したので、足袋のPRをする役割を担っているんですね。ねこ柄とかだるま柄とか、見た目の可愛い足袋をガウチョパンツとコーディネートするとか、そういう提案をするのも楽しいです。

――あざやかなボディペインティングも兼田さんならではの特徴ですね。

兼田 ボディペインティングは大好きな表現ですね。元々一番初めに海外公演をした時に、私が全身に書道を施していたんです。書道家の方に「私の体を半紙と思っていいから」と言って全身に書いてもらったら、面白い、エキゾチックだとめちゃくちゃウケました。耳なし芳一みたいな感じが良かったんでしょうか(笑)。書道のペイントは今でも時々やりますね。

それで評判になってからボディペインティングの素材の会社から後援や協賛の声がかかるようになって、ユニークな材質やきれいなカラーのものをどんどん試すようになっていったんです。

――やはり海外でもウケますか?

兼田 刀を持った状態で、着物をはだけてボディペインティングを見せている写真が海外で大ブレイクしたことがあるんです。「サムライ・インフルエンサー」と呼ばれる日本の侍文化が好きで研究している人たちの中でも面白いものを見つけて発信している人たちがいて、そういう人たちの間で一気に私の写真が広まりました。一時期はSNSで海外からのフォロワーがどっと増えて、ハートマークだけのコメントから英語長文のダイレクトメッセージまで、大量に届いたこともありました(笑)。殺陣だけ、着物だけ、メイクだけじゃなく、トータルで表現しているのがよかったんだと思います。

新しい表現にも挑戦

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――今後のご予定は?

兼田 6月の殺陣集団・鴉の公演のあとは、初音ミクちゃんの『脳漿炸裂ガール』への出演があります。実はミクちゃんとは2018年の『TGC MATSURI』というファッションと音楽と芝居とヴァーチャルアイドルがコラボしたステージでご一緒したことがあるんです。そこでは私は芝居パートの殺陣を中心に関わったんですが、ファッションは蜷川実花さんの事務所のチームが仕切っていたり、音楽も川谷絵音さんはじめ錚々たるメンバーが曲提供していたり、ミクちゃんとキズナアイちゃんが舞台上で生身の役者と共演したり、新しいことに挑戦している感じがすごく出ていて、そういう場所に自分が呼ばれたことが嬉しかったし楽しんで仕事ができたんですね。そういう新しい表現への挑戦はどんどんしていきたいと思います。将来的にはプロデュース側に回るビジョンもあります。もちろん、自分の芯にあるのは殺陣で、おばあちゃんになっても殺陣師の仕事はやっていくし、今は派手さのある踊りっぽい立ち回りをつけていても、年を重ねると渋みのある殺陣付けができるんじゃないかと思うと、年を取るのも楽しみですね。
(聞き手・構成/神田法子)

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殺陣集団・鴉公演『今鳴キ鴉ヨ、モウ笑エ』
令和元年6月22日(土)19時〜、23日(日)12時〜/17時〜(全3公演)
於:ラゾーナ川崎プラザソル
主催・企画制作:殺陣集団鴉、演出:兼田玲菜
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