エスカレーターの片側空けが最悪な理由
今ではすっかり定着したエスカレーターの「片側空けルール」だが、実際のところ、効率や安全性についてはどうなのだろうか。
「一見すれば、『片側空けルール』は効率がよさそうに思えるでしょう。しかし最近では、そうではないということがイギリスや日本での実験、研究によって判明しています。
『片側空けルール』の効率がよくない理由は、二つあります。一つめは、そもそも長いエスカレーターは歩く人が少ない、ということです。例えば、誰も歩いていないのに片側だけに延々と列ができている、という長いエスカレーターを見かけたことはありませんか。これが非効率的であることは、明白でしょう。
二つめの理由は、エスカレーターを歩く場合、前の人との間隔が大きく空いてしまうということです。歩く場合、前にいる人と衝突するのを避けるために、ただ立ち止まっているときよりも大きく間隔を空けてしまいますよね。そのため、輸送効率が下がってしまっているのです」(斗鬼氏)
意外なことに、エスカレーターの片側空けは効率が悪いのだという。では、安全性については……?
「エスカレーターで歩くことは非常に危険な行為だと考えています。東京消防庁の2017年のデータによると、東京でエスカレーターに関わる事故で緊急搬送された人数は、年間1300人以上にのぼっていたそうですから、その危険性は数字にもハッキリと表れています。
そもそも、エスカレーターは歩くことを前提に作られていません。国が定める建築基準法では、階段とエスカレーターは別の扱いになっているのをご存知でしょうか。具体的にいうと、階段は一段の高さが法律によって定められていますが、エスカレーターの場合は制限が無く、階段より高いのです。これは、エスカレーターは乗るときと降りるときは水平なので、一段の高さを定める必要がないということを意味しています。幅もベルトに掴まりやすいように狭く定められており、片側を歩くような幅はありません。エスカレーター上を歩くのが危険であることは、建築基準法が裏づけているともいえるのです」(斗鬼氏)
実は非効率で危険な「片側空けルール」。エスカレーターを利用する際には、すっかり“暗黙のルール”となっている「片側空けルール」をやめてみる勇気を持ちたいが、危険性などを知らない利用者に舌打ちされても怖い。せめて自分はエスカレーターを歩かず、マナー良く立ちたいものだ。
(文=稲元大世/A4studio)
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