「老後2000万円不足」でも貯蓄ゼロ世帯15%、自民党「報告書もうない」と現実見ず

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「Getty Images」より

 5月に金融庁審議会ワーキンググループが試算した「95歳まで生きるには、夫婦で2000万円の蓄えが必要」という報告が波紋を広げている(金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」)。

 報告書では、「夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯が今後20~30年生きるとなると、年金だけでは月5万円の赤字となり、1300万~2000万円程度が必要」と試算。公表されるや否や、「年金100年安心はウソだったのか」と国民の非難が集中した。

 6月7日、麻生太郎財務相兼金融担当相は「表現が不適切だった」などとコメントし、11日にも「世間に著しい不安や誤解を与えており、これまでの政府の政策スタンスとも異なる」「(政府は)公的年金は老後の生活をある程度賄うことができると言ってきた」と述べ、正式な報告書として受理しないと宣言。10日の参議院決算委員会でも野党の追及を受けた安倍晋三首相が「不正確であり、誤解を与えるものだった」と釈明している。

 さらに12日午前、自民党の森山裕国対委員長は、この報告書について「政府は受け取らないと判断した。報告書はもうない」と、データの破棄を明言。政府が報告書の受け取りを拒否しても、報告書がこの世から消えるわけではないのに、驚きの展開である。森山委員長は「現在の年金制度は、将来にわたり持続可能だ」と強調するが、これでは誤解を解くどころか政権与党への不安を煽る一方だ。

 そもそも「年金だけで100歳まで生活する」ことが難しいことは自明であり、目新しい報告ではない。かねてより多くのメディアが「老後は●千万円が必要」「老後のための資産形成を」と喧しく、様々な金融商品の宣伝をしてきたではないか。「公的年金だけで老後の生活が賄える」などと思っている人はそう多くないだろう。上述の報告書でも国民に自助を呼びかけ、金融機関へはわかりやすく有益な金融サービス商品の提供を求めている。

 とはいえ、金融商品を購入して資産形成し、自助努力で老後を賄おうという意識を持てる人というのは、今の日本において“一般的”な存在だろうか。厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成28年)によれば、1世帯当たり平均貯蓄額は1031.5万円だが、全世帯中14.9%が「貯蓄がない」と回答。1500万円以上の貯蓄額があるのはわずか19.8%だ。

 いくら「老後のために2000万円貯めましょう」と煽られても、無理なものは無理である。

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