
『クローズアップ現代+』(NHK)公式ホームページより
11日、『クローズアップ現代+』(NHK)が「“性の偏見”取り払えますか?〜LGBTに寛容な社会のために〜」と題した特集を放送し、話題を呼んでいる。日本社会を真に多様性のあるものにするためはなにを心がけるべきか、提言する放送内容だった。
『クローズアップ現代+』ではまず、日本企業でもLGBTフレンドリーな企業に生まれ変わるために意識を高め、多様な社員が働きやすい環境をつくるべく努力を始めた会社も多いという機運を紹介。ただ、まだまだ道半ばのようだ。
番組では、自らもトランスジェンダーであることを公表しているLGBTキャリアアドバイザーの北川わかと氏が、トランスジェンダーの職員が働きにくさを理由に退職してしまったことをきっかけに対策を始めた介護施設の相談を受ける場面が放送された。
そこで北川氏は、職員の顔写真と名前が掲載されたボードや、他の人の視線を遮るものがない更衣室の構造など、修正すべき点をどんどん指摘していく。性別適合手術を受けるなどして見た目と名前に違いがある職員は、好奇心を抱かれるようなかたちでボードに掲出されることに苦痛を感じるし、周囲の目がある状態で着替えることにもマジョリティーにはない苦痛がともなうからだ。
IKEA(イケア)が行っている先進的な取り組み
社員の多様性を認めていくことが企業の成長に欠かせないという意識がようやく日本でも広がり始めているが、なかなか実践にまではつながっていないのが現状のようである。
一方で、海外のグローバル企業の取り組みは、日本企業のそれとは比べようもなく進んでいるようだ。『クローズアップ現代+』はその一例としてIKEA(イケア)を取り上げている。
イケアでは個人を尊重する社風を積極的に押し出し、LGBTの社員を積極的に採用。社内でもそのことを隠す必要がない状況となっている。オフィスの構造もそれに合わせて工夫が施されており、たとえば、トイレはすべて個室で男女共同。LGBTの人でも苦痛を感じることなく使用することができるようになっている。
こういった取り組みについて、イケアグループのサリ・ブロディ氏はNHKの取材カメラに<多様な価値観をもつ人が働くことを望むので、有能な人材を採用できます。私たちが人材を求め、人材が私たちを求めるのです。また、あらゆる人のライフスタイルを尊重し、業績も上げています>と語っていた。
アクサ生命保険社長の提言「そもそも社会は多様である」
企業が「多様性を尊重する」というメッセージを出すことで、優秀な人材が集まってくるが、メリットはそれだけではないようだ。多様性についてよく理解することは、この社会のニーズを正しくつかむことにもつながる。
『クローズアップ現代+』でスタジオゲストとして招かれた、アクサ生命保険社長の安渕聖司氏の言葉がそれをよく表していた。
アクサ生命保険は、企業として東京レインボーパレードに参加したり、福利厚生サービスを同性パートナーも受けられるように制度を変えたり、入社試験の際に応募書類に写真を貼るスペースや性別を記載する欄を設けないなど、LGBTフレンドリーな企業となるために積極的な取り組みを行ってきた。その意味を安渕氏は次ように語る。
<企業の立場から申し上げますと、『そもそも社会は多様である』というのが前提条件になってくると思います。その多様な社会というのにお客様がいるわけですから、お客様も多様だと。我々はその多様なお客様にアプローチしていくためには、その多様性というものをよく理解して社内に取り込んでいかなくてはいけないということが企業としては必要性を感じているところです>
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