ホームオーディオメーカーとして生き残り目指したが
オンキヨーは、実は2015年に、前出のパイオニアからホームAV機器事業を事実上買収している。
パイオニアはホームAVを手放してカーナビなど車載事業に舵を切り、一方のオンキヨーは逆にオーディオにこだわり、オーディオ分野でのスケールメリットを求めた。この時点では「ホームオーディオで生き残る」という腹を決めていた。
また、オンキヨーはパイオニアのオーディオ機器事業を手に入れる一方、ほかにも多くの経営再建策を実施している。人員削減、OEM事業の強化、インド市場への参入などが代表的な再建策で、インドでは現地大手のミンダグループと提携したほか、中国家電大手TCLとも提携した。
オーディオ機器市場に軸足を残しながらも、インドでは車載用、中国ではテレビ用スピーカーなどにも展開、さらに「eスポーツ」などを視野に入れ、ゲーム用ヘッドセットなどの製品も投入してきた。
しかし結局、こうした必死の取り組みも業績回復にはつながらなかった。オンキヨーは、18年3月期時点で5期連続の最終赤字となっており、この時点で純資産は27億円にまで低下した。この年の最終赤字が34億円だったから、19年3月期も同じレベルの決算だと債務超過に転落するというレベルにまで追い込まれていた。
なお結果的に19年3月期は、売上高が対前期比14.9%減の438億3600万円にまで落ち込み、経常利益は16億7600万円の赤字(前年は19億4700万円の赤字)となったものの、投資有価証券売却益など特別利益を19億円計上し、最終の当期利益はなんとか3400万円の黒字とギリギリの利益回復を果たしている。
しかし、投資有価証券売却益は毎年出せるわけではない。このため抜本的な解決策として、ついに主力事業の売却を決断した形となった。
オンキヨーは極めて積極的に経営再編に取り組んできた。それでも最後にはホームオーディオを手放すことになった点にオーディオ市場の限界が見える。
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