ヤマト運輸ら宅配大手三社の「働き方改革」、しわ寄せが酷い?

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配送業界大手三社(画像はWikipediaより)

 宅配業界はネット通販の普及による物量増加や、慢性的な人手不足により、労働者が過酷な働き方を強いられている印象が強い業界だ。ヤマト運輸を始め、佐川急便、日本郵便の大手三社では、ドライバーの待遇改善に取り組む「働き方改革」が進むが、そのしわ寄せも発生しているという。

 宅配業界の特殊な業界構造を熟知する、物流コンサルタントの花房陵氏に、宅配業界の構造や問題点などについて、解説してもらった。

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花房 陵(はなぶさ・りょう)/物流コンサルタント
慶應義塾大学経済学部を卒業し、経営・物流コンサルタントとして30年以上活躍。28業種(200社以上)という物流の現場経験をもとに、物流改善の総合アドバイザリー業務を担う。著書は『見える化で進める物流改善』、『戦略物流の基本とカラクリ』、『物流リスクマネジメント』など多数。Twitter

現在の宅配業界でまかり通っている「業務委託制」のカラクリ

 宅配業界が抱える労働環境問題は、他の多くの業界と何が違うのだろうか。

「2015年以前は、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便などの業界大手でも長時間労働やタイムカードの未記入、それに伴う残業代の未払いなどが多く見受けられたのは事実です。この業界では、入社して5年間ほどは一般社員ですが、6年目頃からは労働内容はほぼ変わらないまま“管理職”という名ばかりの役職が与えられて、労働時間対象から外すといった“抜け穴”が横行していたのです。しかし、2015年に労働基準監督署の大々的な監査が入ったことで、業界全体に大幅な見直しが行なわれ、現在の“とある体制”に一気に移行していきました。

 その“とある体制”というのは“業務委託制”です。まず現在の業界の基本構造を知っていただきたいのですが、宅配業界はヤマト、佐川、日本郵便の3社が大手で、ヤマトを除く多くの運輸企業では非正規雇用者や業務委託契約による下請け構造があり、下請けや孫受けには独立自営業者が従事していて、労働基準法の適用外となっているのです。

 ですから、大手3社の正社員として働くドライバーは規定労働時間運転後、外部に業務委託しているのです。よく『宅配業界は残業が多い!』とされますが、大手3社の社員はかなり改善されているでしょう。ただ、残業という概念がない自営業者(委託業者)にそのシワ寄せが向かっている状態なのです」(花房氏)

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