
「GettyImages」より
金融庁が公表した、人生100年時代を見据えた資産形成に関する報告書が大きな波紋を呼んでいる。年金制度の限界を認め、国民に自力での資産形成を求める内容に衝撃を受けた人が多く、7月の参院選前というタイミングもあって、選挙の争点にもなりかねない状況だ。
これまで一部の政治家や政府関係者が、公的年金があれば安心して暮らせるかのようなニュアンスで国民に説明してきたことは問題だが、現行の年金給付水準が維持できないことは、以前から分かっていたことであり、特段、驚くような話ではない。表現の問題はともかく、書いてある内容はおおむね正しいので、一度、読んでみることをお勧めする。
<金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書はこちら>
※報告書の最終版では、批判を受けて「年金が減る」という文言そのものは削除されているので、閲覧時には注意してください。
金融庁が公的年金の限界について指摘
金融庁は2019年5月22日、高齢化社会のあるべき金融サービスについて示した報告書案「高齢社会における資産形成・管理」を金融審議会に提示した。
報告書案では、長い老後を乗り切るためには資産寿命を伸ばす必要があるとの立場から、ライフステージについて「働き盛りの時期」「定年退職前後」「高齢期」の3つに分類。各フェーズにおいてどうすれば適切に資産を管理できるのか解説している。
この報告書が波紋を呼んだのは、退職金の減額と公的年金の限界についてストレートに指摘したからである。
年金の給付水準が減額になる可能性が高いことは、厚生労働省のシミュレーションなどで、すでに明らかになっているが、同報告書はあらためてこの問題に言及。事実上、年金だけでは暮らせないことを認めた。
退職金についても、今後は「退職金制度の採用企業数や退職給付額の減少傾向が続く可能性がある」として、退職金と年金の2本立てで老後の生活を成り立たせるという従来の概念が通用しなくなったとしている。
この報告書案は金融庁の審議会で議論されているものなので、あくまで金融サービスについての内容だが、「金融サービスを利用する国民の意識が高まることを期待する」との文言もあり、国民に対するメッセージという意味合いも含まれていた。
乱暴に言ってしまうと、「年金はアテにならないので、あとは自力でがんばってください」という内容であり、多くの人が衝撃を受け、炎上騒ぎに発展した。