自転車が車道を走れないなら、「歩道は押して歩く」というルールはどうだろう

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「Getty Images」より

 「近年、自転車は、環境負荷の低い交通手段として見直され、健康志向の高まりを背景に、その利用ニーズが高まってい」る、と国土交通省のwebページに書かれている。

 それは、国土交通省と警察庁が共同で開催した「新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会」のレポートを紹介するページだが、10年以上前のものだ。いま実際にニーズが高まっているかどうかは知らない(東京都の2018年に行ったアンケート調査によれば「自転車を『利用する』割合は、2006年調査時と比べて約1割減少している」のだそうだが)。

 しかし東京オリンピックを控えた現在も、自転車の利用を促進することは、少なくとも「政治的に正しい」方向性ではあるだろう。自転車が環境負荷の低い交通手段であることは確かだからだ。

 とはいえ、何事もいいことばかりではない。近年、自転車が関係する交通事故、中でも自転車が加害者側となる事故に注目が集まるようになってきた。

 もちろん、交通事故全体でみると、自転車が関係する事故自体は、交通事故全体と同様、発生件数の減少傾向が続いている。2018年の警察庁発表資料によると、自転車の交通事故の8割強は対自動車の事故で、自転車は概ね被害者側であり、加害者となる場合、すなわち対歩行者の事故は3%を占めるにすぎない。しかし、自転車の対歩行者事故は他の類型の事故と比べて減少幅が小さく、相対的にその問題に注目が集まりやすくなっている。

自転車事故は、若年者が加害者で高齢者が被害者の傾向続く

 自転車対歩行者の事故当事者の年齢層を見てみると、自転車運転者は24歳以下の若い年齢層、歩行者は65歳以上の高齢者である場合が比較的多いという。自転車運転者による対歩行者死亡・重傷事故のうち、約52%は24歳以下の若い運転者による事故だった。比較的大きく報道された、2017年12月に神奈川県川崎市で起きた事故、2019年5月29日に大分市で起きた事故などは、ネット検索でもヒットするが、これらはある意味、典型的なパターンということになる。

 この傾向は長期的にもほぼ一貫している。2012年に公益財団法人交通事故総合分析センターで発表された分析によると、自転車と歩行者の交通死傷事故は、2002年から2011年までの10年間で2万6316件発生している。概ね9割が軽傷だが重傷者も1割おり、自転車側で10名、歩行者側で44名が死亡したという。これらの事故の中で多くを占めるのは、やはり加害者側が13~24歳の若年者の場合だった。

マナーの悪い歩道での自転車走行

 これらの事故において、自転車側に交通法令に違反するケースが多くを占めることはこれらの調査でも明らかだが、法令違反はこうした重大事故の事例に限らない。実感としても、街中で見かける自転車の交通マナーは総じて悪い。信号を無視する、2人乗りする、一時停止しない、車道を逆走する、複数台で並走するなど枚挙にいとまがない。中でも気になるのが人の間を縫うように歩道を爆走する自転車だ。

 大分の事故も歩道で起きたが、事故には至らずとも、ヒヤリとする状況には半ば日常的に遭遇するし、軽くぶつかることも決して少なくはない。事故の危険性はさほどなくとも、並走して歩道をふさぐ者、歩行者をどかそうとベルをしつこく鳴らす者、歩道に放置して道をふさぐ者など、迷惑行為も日常茶飯事だ。

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