プロならではの高い専門性は、リアル店舗の強みになる
逆境に立たされているリサイクルショップだが、一方で、フリマアプリにはない強みも持っている。
「フリマアプリを使って自分で売る場合、交渉、梱包、発送といった手間がかかりますが、店舗に売りに行けばその場で現金に換えられますし、値段がつかなくても引き取って処分してくれるケースもあります。そういったお手軽さや利便性は、実店舗の強みのひとつと言えるでしょう。ただし私は、店側が真に求められているのは、“プロにしかない3つの専門性”であると考えています。
その1つ目は鑑定力。ブランドバッグや骨董品は偽物も多く流通していますから、フリマアプリで買うことに不安を感じる方も多いでしょう。真贋を判別する専門家が必要とされます。
また2つ目は、物についての専門知識です。たとえば電化製品ならば、商品のメーカーや機能などの細かいスペックや、どの機種が人気で、値下がりしているのかといった相場状況に関する知識で差をつけることができます。
そして3つ目は、私は“コトの提案力”という言葉で表現しているものです。中古品を購入する時、商品を便利に使う方法や楽しみ方のアドバイスなどは、フリマアプリで聞くことはなかなか難しいですよね。そのため、商品の具体的な使い方を提案するというサービスは、プロだけが提供できる強みになるでしょう。
また、買取を希望する顧客は、物を売るという行為の奥に『断捨離したい』『終活で整理をしたい』『換金したい』など、さまざまな動機を持っています。顧客の希望を理解したうえで、一人ひとりに合った質の高い接客をしていくというのが、リアル店舗の課題ではないでしょうか」(福本氏)
また、接客以外にも、苦境に立たされた企業が、巻き返すために重要な課題があるという。
「環境省が2015年に行ったアンケートでは、過去1年間に不用品の売却をしていない人が約60%という結果が出ています。エコが叫ばれる世の中ですが、不用品は売らずに捨ててしまう人が多いというのが現状なんですね。なぜ売らないかといえば、大半の人が“中古品を売っても手間がかかる割にたいしたお金にならない”と感じており、経済的な動機性が低いからでしょう。これをリユース業界が解決していくためには、先ほどの専門性を高めて顧客の満足度を高めることがポイントになるはずです。
また、社会的な動機性の周知がまだまだ足りていないことも問題です。リサイクルショップに物を売ることで、地球なり環境なりに“いいことをしたな”と思えるような動機の浸透が不十分。リユース事業を通じて社会貢献を掲げるなど、目的や理念を持っている企業はたくさんあるのですが、それがまだ世の中や消費者には伝わっていないのです。リユース事業がなんのために行われ、今後どのような未来や社会作りに繋げていきたいかという企業理念をいかに外へ発信していくか。これが、リサイクルショップの未来を決めるのではないでしょうか」(福本氏)
フリマアプリの登場によりピンチに陥ってしまったリユース市場だが、利便性や専門性といった“強み”がある。今は淘汰の時期かもしれないが、ピンチをチャンスに変えられるようなビジョンを打ち出せば、生き残り続けるはずだ。
(文・取材=後藤拓也[A4studio])
1 2