あらゆる問題がなかなか解決しないのは「思考回路」が原因
日本社会がこうしたメカニズムで動いていることは、皆、薄々気づいてはいたが、ネットの普及以前は、広く社会で共有されることがなかった。このため、日本において、なぜ多くの問題が解決しないのか、釈然としないことが多かったはずである。
だが、ネットの普及によって、一連の問題が日本人の思考回路そのものに起因している可能性が可視化されるようになった。原因が可視化されたのはよいことだが、わたしたちの思考回路に起因しているとなると、解決は容易ではない。
本稿では、金融庁の報告書問題と長時間残業の問題を取り上げたが、少子化、子育て支援、セクハラ、パラハラ、いじめなど諸問題についても、一向に状況が改善しないのは、同じメカニズムが作用しているからである。
少子化については、多くの有力者が「女性が子どもを産まないことが原因」と発言している。彼らは本気でそう思っている可能性が高い。社会の仕組みではなく、誰かに問題を押し付けるのは、まさに息を吸うような感覚なのだ。
いじめの問題も同じである。いじめの場合、これまで加害者として積極的にいじめに加担していた人が、何の理由もなく突如、いじめの被害者に転じることは珍しくない。つまり加害者と被害者は同一の属性なので、いじめは良くないという話をしても問題は解決しない。
問題の本質について丁寧な議論を続けていくしか、わたしたちの思考回路を変えていく方法はない。道のりは遠いが、地道な努力をすることこそが、結果的には早道となるはずだ。