
「K CON」公式Instagramより
BTSが米ビルボードチャート連続1位を獲得し、BLACK PINKはK-POPガールズグループとして初めて出演したコーチェラ・フェスティバルのステージを成功させるなど、全世界規模でファンを増やし続けているK-POP。米ロサンゼルスで開催された「KCON LA 2018」(韓流文化コンテンツが体験できるイベント)の来場者数は過去最高の約94,000人を記録。K-POPカルチャーへのグローバルな注目度の高さをうかがわせた。
昨年の 「KCON LA」 で特に話題となったのは、「K-Pop’s LGBT Fandom:We Love It!」というライヴトークショーだった。これは2014年から同イベントで恒例となっており、LGBTコミュニティからみるK-POPのファンダム(ファンによって形成される文化やその世界)の独自性について議論するもの。昨年は音楽ジャーナリストやドラァグ・アーティスト、著名YouTuberなどのパネリストが参加し、「欧米ポップミュージックシーンとK-POPシーンの性役割(ジェンダーロール)へのアプローチの違い」をテーマに話し合われた。
ここでは、以下の2点がフォーカスされた。
1. <同性同士のアイドルがお互いの親密さをどのように表現しているか>
「彼らが公の場で表現するお互いの親密感は、アメリカよりもオープンである」
2. 欧米のポップミュージックシーンとは異なる“男性らしさ” の定義>
「他文化圏とは異なったK- POPシーンの性別が持つ役割へのアプローチとそれを受容するファンダム」
K-POP アイドルたちの“skinship”は、同性間の新しい関係を提言する
まず、1の<同性同士のアイドルがお互いの親密さをどのように表現しているか>については、音楽ジャーナリストのLai Frances氏が「他文化圏のK-POPファンダムではメンバー間の関係性を表す際“skinship”という用語がよく使用される」と指摘し、“skinship”は欧米のポップカルチャーやファンダムには存在しない概念であったと分析した。そのうえで、「恋人関係にない同性同士で手を繋いだり腰に腕を回したりする身体的接触はK-POPのアイドルにとって自分たちの親密さを表現する手段である」と続けた。
日本では一般的に使用されているスキンシップという単語だが、英語版現代用語辞書『Urban Dictionary』では、“skinship”が次のように解説されている。
<韓国では、スキンシップという用語は一般的に同性、場合により異性間の非常に近いプラトニックな友人同士で非性的な接触の行為を表すために使用される>
<たとえ彼らが恋愛関係になくても、韓国人が同性同士でお互いに手をつないだりする行為は珍しくはない>
また、文化交流アプリ「amino apps」内におけるスペイン語圏のK-POPファン・コミュニティでは、“skinship”をこのように解説している。
<スキンシップという用語は、親密さのレベルを表すために使用する“skin”と“friendship”を掛け合わせた和製英語で、後に韓国でも一般化された>
<彼らの文化に挨拶のキスは存在しないが、親しい同性同士において手をつないで歩く様子は見られる>
ここで判明するのは、同性間の愛情表現におけるカルチャーギャップである。少なくとも西洋的な価値観においては、親密な身体接触は恋愛関係にある者同士に限られるという見解が根強い。しかし、K-POPのアイドル間でみられるようなスキンシップの行為は、性愛のもとに限らず友情や親愛の証として行われることが一般的に受け入れられているのだ。
これについて知識共有プラットフォーム「Quora」には、このような興味深い書き込みも見られた。
<西洋的な価値観のもとK-POPスター同士の関係性を図ることはできない。彼らの親愛の行為をPDA(性愛的な公共の場で見られる身体接触)と誤解するべきではない>
他文化圏のK-POPファンの多くは、欧米のポップミュージックシーンにはなかった同性同士の新たな関係性の在り方や、その可能性を、K-POPアイドルの姿を通して発見していたのだろう。
また、Frances氏は、スキンシップ以外にもK-POPの作品を通して提示される関係性の在り方について、TWICEの『What is love?』のMVを挙げて説明した。このMVは、『ラ・ラ・ランド』『ロミオ+ジュリエット』『レオン』『パルプ・フィクション』『Love Letter』など有名映画のオマージュという基本コンセプトにのっとった作品だが、Frances氏によればそこにはあるサブテキストが読み取れると言う。
「メンバーたちはそれぞれペアを組んで (映画の登場人物に扮して)いる。 映画の中では異性同士のペアだが、このMVでは女性であるTWICEのメンバーが男性の役割も演じている」
「ここで、女性は男性からの愛だけではなく女性から様々な形の愛を享受し結びつくことができることが示されているのではないか」