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母親がひたすら手をかけないと赤ちゃんがうつに? 「サイレント・ベビー」説の源流を探る

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「Getty Images」より

 カラオケボックスへ駆け込み、『時代』(中島みゆき)を熱唱したくなりました。「そんな時代もあったのね~!」以外の、言葉が出てこないので。赤ちゃんがうつ状態になる「サイレント・ベビー」なるお説の源流である柳澤慧(さとし)著『いま赤ちゃんが危ないーサイレント・ベビーからの警告』(日本実業出版)を読んでのことです。

 これについてはたくさんのトンデモ育児情報をジャッジしてくれる小児科医の森戸やすみ先生がすでに、「医学用語ではない」と指摘し、さまざまな問題点等を指摘しています(「サイレント・ベビー」の真実)。ところが巷のママサイトなどでは「手のかからない良い子は、サイレント・ベビーかもしれないので要注意!」とカジュアルに紹介されジワジワ拡散。世のお母さんたちを「もしや我が子が大変なことになっているのか……!?」と怯えさせた源流は、具体的にどんなことを語っていたのか、今回はそれをご紹介していきましょう。

バブル時代に生まれたお説

 同書が発行されたのは1990年。小児科医である著者が「静かで寡黙な笑わない赤ちゃんが増えている」と危惧し、「サイレント・ベビー」なる言葉を作ります。そして当時の若いお母さん方へ向け、こう警鐘をならしたのです

・経済が発展し情報も豊富になり、お母さんにとっては表向きは子育てが楽なよい時代だが、赤ちゃんにとっては必ずしもよき時代とは言えない。育児文化や環境の変化によって、母子の絆が、無意識のうちに希薄になりかけている

・楽をして赤ちゃんの欲求を叶えてあげないことを繰り返すと、母子相互作用が保たれなくなり、サイレント・ベビーの始まりとなる

・幼児期に与えられた少しのゆがみは、将来どのような形で現れるかわからない。情緒が未成熟で他人とのコミュニケーションがとれない人間に育ってしまう可能性もある。何らかの手段で赤ちゃんからの報復を受けるに違いない

・育児で大切なことは、このような危険な要素を少しでも取り除くこと

・赤ちゃんのときのコンタクトは、どんな犠牲を払ってでも保つことが親の義務

 後ほど詳しくご紹介しますが、この著書は相当な「昔ながら」推し。「昔ながらの教」にかかり古き良き知恵が家庭内で受け継がれないと、経血コントロールができなくなったり体幹が弱くなったりサイレント・ベビーになったりと、大変ですな~。

 さて、同書を執筆されたタイミングはおそらく80年代終盤です。80年代の日本といえば、言わずもがな空前絶後の好景気。いまなら「夜のお姉さんかしら……」と思ってしまうほどの金ピカファッションがOLや女子大生の標準装備。消費は加熱し、トレンドはイタめしティラミスアルマーニ(一方オタク文化は暗黒期・涙)。若者ヒエラルキー上層部は「ネアカ」が絶対で、素人とアイドルの境目が薄れていき(例・おニャン子クラブ)、女子大生ブームなんかもあり、その手札を使ってそこそこおいしい思いをしたという人もいるでしょう。ちなみに同書のテレビネタでは光GENJI(1987年に誕生したジャニーズグループ)が登場。

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