
「Getty Images」より
どれだけITやAIの技術が進化しても、ビジネスの場面において必要不可欠といわれるのが、営業職の存在。特にBtoBでは、WEBの充実や広報活動に力を注いでも、最終的に営業力の良し悪しにより成果率は大きく左右されてしまうのが現状だ。
それほど重要視されているにもかかわらず、慢性的に営業職の人手不足を肌で感じている読者も多いのではないだろうか。今年、エン・ジャパンが762社に行ったアンケートで、「人材不足を実感する」と回答した人事担当者のうち、不足している職種に営業職をあげたのは35%と最多であった。(※人事向け総合情報サイト「人事のミカタ」調べ )
毎年、多くの若い人材を入社させ、十分な教育も行える大手企業とは違い、中小企業はこの課題に対して急場しのぎの対応しかできていない。
最も多いのが、テレアポ専門会社への委託。営業のアポだけを取りつけてもらう方法だが、課題も多いと聞く。とある営業マンの話によれば、テレアポが獲得した営業先へ足を運んでみると、先方から早々に、「で、あなたはどんな仕事をされているのですか?」と、商談以前の話からスタートしなければいけないといった事態もしばしば発生しているという。これは、営業意欲の低下と営業力の低下を示す緊迫した事態と見てとることができる。
では、営業力の強化や営業職不足の解消に悩む中小企業はどうすればよいのか。今、「この状況を突破する可能性が大いにある」と、関西の企業家たちを中心に熱い注目を集める協会がある。その名も、「日本なりきりマネジメント協会」。なんともユニークな名称だが、活動内容を聞けば、さらに驚愕してしまうだろう。
ロールプレイングの手法を取り入れ、「サムライ」「原始人」「大奥」など、さまざまな役になりきって、交渉術を学ぶための研修を提供するのが、この協会の活動だ。いったいどのようなメソッドによって、中小企業の目下の課題である営業力を強化しているのだろうか。協会で代表理事を務める鷹尾豪氏に、協会設立の経緯から具体的な研修の中身について話をうかがった。
営業の目的は、互いを理解し関係性を築くこと
——まずは、「日本なりきりマネジメント協会」を立ち上げた経緯からお伺いできますか?
鷹尾:私はこれまでに、家賃やM&A、労使などの交渉を行う仕事に携わってきた中で、優位な立場であるほうが強引に物事を進めてしまう場面に何度も遭遇しました。こうした力関係で動く状況はフェアではなく、変えなければいけないという思いが常にありました。そこで、交渉の上で学んだノウハウを世に広め、交渉空間をもっとクリアで両者が満足できるものにしようと思ったのが、当協会を立ち上げたきっかけです。
——交渉の最前線で活躍されていただけに、その状況を変えたいという使命感を持たれた気持ちはとてもわかります。具体的には、どのような研修を行っているのですか?
鷹尾:交渉ごとを行う営業マンにとって、大切なスキルは“売ること”ではなく、相手と“関係性を築く”ことだと思っています。いくら売り込みたい商品やサービスのメリットを並べ立てても、相手には「どうせ契約がほしいんでしょ?」と見透かされて、警戒心が生まれてしまうのがオチです。大切なのは、相手の状況を理解し、関係性を上手にコントロールしながらYESをもうらこと。すると相手は、営業マンと一緒に買ったような気持ちになります。その状況を私たちは、“合意形成を経た状態”と定義しています。こうした合意形成を得るためのノウハウを研修でお伝えしているんです。