
病いと子供と私
中学時代の友人が以前SNSで、息子の1歳の誕生日にこんな投稿をしているのを見かけた。
「妊娠と同時に、子宮頸癌が発覚。私の病気にふりまわされた一年だったけれど、元気に育ってくれて感謝」。
マザーキラーとも呼ばれる子宮頸癌は、妊娠・出産・子育て期にある20代〜30代の発生率が高い。友人は妊娠という喜ばしい人生の変化に差し込んだ暗い影を、どう乗り越えてきたのか。20年ぶりにかつての同級生に話を聞きに行った。
思いがけない妊娠と同時に、子宮頚部に異変発覚
村田由美子さん(仮名)の妊娠がわかったのは2年前、37歳のときだった。結婚して3年目。それまで妊娠したことはなく、「子どもはおそらく授からないだろう」と思っていた。
「結婚も遅かったし、もともと夫婦ともにそれほど子どもを持つことを熱望していたわけではなくて。このまま“子なし”の人生を送るんだろうなって思っていたところに、本当に思いがけず授かった感じでした」
「海の日」の祝日に開いている産婦人科をわざわざ夫が探してくれて、二人は初診で妊娠判定を受けた。その際、市から発行されているチケットを使って子宮頸癌検査も受けてみたらどうかと勧められ、せっかくだからと由美子さんは検査を受けることにした。
「結婚前にブライダルチェックで婦人科系の健診を一通りうけて、何の問題もなかったんです。だから子宮頸癌も100%陰性だと思っていました。それが、検査結果を聞きに行ったら、なるべく早く子宮の精密検査を受けてくれと言われてしまって。驚きました」
里帰り予定だった実家に近い病院で精密検査を受けた結果は、「高度異形成の可能性が高いが、微小浸潤の否定はできない」というもの。
子宮頸癌の前段階ともいわれる子宮頚部の細胞変異は、軽度の場合は自然治癒することも多いが、まれに中等度、高度と時間をかけて進行し、癌になることもある。由美子さんの「微小浸潤の疑い」は、まさにその癌への進行段階にあるかもしれない、という意味だった。
「一番気になったのは、子どもが産めるのか、ということ。大きな病院でセカンドオピニオンをとったら、『直ちに手術をする状況ではないでしょう』と言われました。妊娠中の子宮の処置は出血量が多く危険なので、無理に処置をするよりは、お産が終わるまで様子を見て大丈夫でしょう、ということでした」
医師の言葉を信じ、妊娠継続を決意した由美子さん。しかしその後、由美子さんを苦しめたのは、長年患っていた鬱病の再発だった。