妊娠と同時に子宮頸がんが発覚、「生きていたい」から選択した決断

【この記事のキーワード】

価値がないと思っていた自分をやっと好きになれた

 現在、由美子さんは専業主婦として、息子さんと多くの時間を過ごしている。希望通り、公園で家の中で、パタパタと走り回る愛しい存在を追い掛け回しながら。

「専業主婦って誰も評価してくれないし、もちろん報酬もない。ああ、一日漫画読んで過ごしたい! って思いますよ(笑)。思うけど、本当に一日漫画を読んで過ごすしかなければ、どんなに虚しいかはもう嫌というほど知っているから。夫と喧嘩することだってしょっちゅうだけど、それでも野球中継を見ながら家族3人ゴロゴロしたり、一緒に過ごしたりできるだけで、よかったなと思えるんです」

 鬱病も癌も、完治することはないといわれる病気だ。寛解の状態があるだけ。再発しない保証はどこにもない。健康への不安を抱き続けながら、幼い子供を育てるのは、つらいことだろう。でも由美子さんは笑って言う。

「でもね、もし私が鬱で寝込んだままで、妊娠することがなかったら、検診も受けず私の体は癌に蝕まれてとっくに死んでいたはずなんです。もしそうだとしても何の後悔もなかった。でも、息子が生まれて初めて、死にたくないって思えたんです。この子は私を死なせないためにやってきてくれたのかなって。生きてもいいいよって言われているような、まだ生きてできることがあるのかなって思える。あんなに死にたいって思っていたのに。今は、死んだら困るんです。死んでいられない」

 人生の途中で出会う誰かの苦しさを、私たちはいつも見過ごしてしまっている。病気になってどん底にいる友人に気づくことさえできずに、生きている。

 それでも、今、私の前で、家族でいることの幸せを笑顔で話してくれる由美子さんに、私は心からお礼を言いたかった。死にたいと願っていた由美子さんに何もできなかったけれど、死なないでいてくれて、また会えてよかった、と。

「精神科に通っていた両親の子どもが幸せになるって普通は思えないかもしれないですよね。でも、私たちは、それなりに二人とも頑張っています。夫も、辛い日もあるだろうに毎日お勤めに通ってくれてる。私も私なりに……。それは、息子を不幸にはできないから。

 こんな私にも自分以外の存在のために、頑張る力が残っていたんだって、そう思わせてくれる子供の力は、すごいですよね。自分以外のために頑張る力が残っていた私は、本当に幸福だったと思うんです」

1 2 3

「妊娠と同時に子宮頸がんが発覚、「生きていたい」から選択した決断」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。