裁判員制度は定着したのか? 裁判員の辞退と無断欠席が相次ぐ理由

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仕事を休むと裁判員であることがバレる? 候補者を萎縮させる「公表禁止規定」

 裁判候補者になると、自分が裁判員候補者であることを公にしてはいけないという「公表禁止規定」が課される(裁判員法101条)。

 これはもともと、事件関係者から不当な働きかけを受けないよう、裁判員を保護するために生まれた規定なのだが、「公にする」の「公」の線引きが難しく、候補者を萎縮させて、裁判参加への意欲を奪っているという指摘がある。

 たとえば、最高裁判所に寄せられている以下の質問への回答だが、

“Q. 仕事を休むと裁判員であることがわかってしまうのでないでしょうか。

A. 休暇を取得するために裁判員になったことを上司等に話すことは差し支えありません。なお、あなたが裁判員になったことを、上司等が公にすることは法律で禁止されています。 ”

 裁判所の答えにある「あなたが裁判員になったことを上司等が公にすることは法律で禁止されています」の「公にする」の意味をどうとらえればよいのか、ぱっと見ではわからない。

 別のページを見ると、「公にする」とは不特定多数の人が知ることができるような状態にすることで、家族や親しい人に話したり、上司に休暇申請したり、同僚の理解を求めたりする分には問題ないと書かれていたが、同僚といっても違う部署でもいいのか、取引先はどうなのか。

 先に述べた、裁判員を務めた男性が、なぜか無断欠席扱いになっていて退職したケースも、この線引きの難しさが生んだ不幸だったのかもしれない。

95%が裁判員を経験して「良かった」と評価しているが……

 最高裁判所のまとめによると、これまですでに1万1000件を超える裁判員裁判が実施されており、約8万9000人の国民が裁判員として刑事裁判に参加した。

 その実に95%以上が「良い経験だった」と述べているそうだ。そんなにたくさんの人が参加したなら、その経験談をひとつくらいは耳にしてもよさそうなものだが、あまり聞くこともなく、ほとんど伝わってこないのはなぜか。

 専門家たちは、裁判員に課される「守秘義務」がネックとなっている、と指摘する。

 裁判員には守秘義務があり、評議の内容を漏らしてはならないとされている。公開の法廷で行われたこと、裁判員として参加した感想などは話してもよいが、評議が多数決だったのか全員一致だったのか、どのような意見が出たかなど、具体的な話をすれば守秘義務違反になる危険があるという。

 「評議が一番大事なところなのに自分の経験をほとんど話せないのがつらい」「秘密を守るのが足かせになって抽象的になってしまい、各論では話せない」

 このような裁判経験者の声を、著書『あなたが変える裁判員制度』(同時代社)で紹介しているのは、裁判員制度を市民の視点から考えるネットワーク、一般社団法人裁判員ネット代表の大城聡弁護士だ。大城聡弁護士は、「裁判員の経験の核心部分でもある評議に関して広範な守秘義務が課されていることは、裁判員の経験を市民の間で共有することを妨げる壁になっている」と指摘する。

 裁判員がもう少し自由に経験を話すことができ、次に裁判員になる人がもっと安心して主体的に裁判に参加できるよう、守秘義務の緩和が必要だとの声が、大城弁護士はじめ、数多くの専門家から上がっている。

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