人材確保以上の効果を期待できるプロジェクト「スクラム採用」

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「Getty Images」より

 企業が人材を確保する方法が多様化してきている。求人サイトやエージェントによる人材確保だけでなく、SNSを活用した採用活動も行われている。また、リファラル採用といった新しい採用方法も試され始めた。このような採用活動の多様化のひとつとして、「スクラム採用」なるキーワードが注目され始めている。

 スクラム採用は株式会社HERP(東京都品川区)が提唱する社員主導型の採用方式。特に人材採用の成否が成長のカギを握るスタートアップでは注目度が高い。全社一丸となって社員主導で行われるというこのスクラム採用とは、どのような方式なのか。

スクラム採用とは何か

 「スクラム採用」の「スクラム」とはラグビーのスクラムと同じ意味で、チームメンバー同士が肩を組んで団結している様子を示している。スクラム採用という用語を提唱したのは、株式会社HERP代表の庄田一郎氏だ。元々はシステム開発の現場で使われていたスクラム開発という考え方を、採用活動に取り入れた。庄田氏は、スクラム採用を以下の3つの条件を満たす用語だと定義しているので、そのまま引用する。

●権限移譲

 採用活動のワークフローを分解し、各フローを社内の最適な担当者に権限移譲している。各職種の最適な採用手法に関しても、現場主導でPDCAを回している。

●成果の可視化

 採用活動によって得られた成果を全社員にFBしており(する土台があり)、採用担当を中心に定期的な振り返りが行われている。

●採用担当のPM化

 採用担当が、採用活動における施策のオーナーではなく、全体のプロジェクトマネジメントやドメインプロフェッショナルとして機能。採用に関する知識を現場の社員へインプットする役割を担っている。

(以上、「現代の要請を満たす、スクラム採用という考え方とその実践 – Ichiro Shoda – Medium」より引用)

 つまり、人材を採用するなら採用したい現場が率先して活動し、採用担当者はプロジェクトのマネジメントに注力するということだ。HERP社では、スクラム採用を支援するプラットフォーム「HERP ATS」の開発・運営を行っている。

 「ATS」は「Applicant Tracking System」の略で、採用管理システムとも呼ばれている。つまり、応募者が現在どのような評価をされている段階なのかを追跡(Tracking)できるシステムを示す。「HERP ATS」はIT系企業が利用している10以上の求人媒体からの応募情報と、エージェント推薦や社員紹介などからの応募情報を自動的に取得し、採用候補者を一元管理できる。

 そして採用にかかわる社員たちがSlack連携で選考プロセスを共有することができるのだ。このことで、社員達による採用の意思決定の速度と精度を向上させることができる。

なぜ、スクラム採用が注目されているのか

 現場の社員が、自分たちの欲しい人材を見定める――。考えてみれば当たり前なほど有効な手法だが、これまで人材採用は、現場を熟知しているとは限らない人事担当者に任されていた。現場の者たちは、採用活動についてどこか他人ごとのように考えていたのだ。

 そのくせ、現場に相応しくない人材が送り込まれてくると、「人事担当者は何をやっているんだ」と舌打ちをすることもあっただろう。また、現場を説明しきれない人事担当者が採用した人材は、離職率も高かった。

 そこで近年は、リファラル採用が注目されてきている。リファラル採用は欧米で先行して普及したリクルート方法で、すでにその企業で働いていて、企業風土や労働環境、そして仕事内容を熟知している社員が人材を推薦・紹介(referral)する方法だ。現場と推進したい人物の両方を熟知した社員の紹介であるため、採用された人材の定着率が高いことが注目されて、日本でも導入されるようになってきた。

 スクラム採用は、このリファラル採用の拡大版と考えることができる。つまり、現場を熟知した社員が、知人だけを対象とするのではなく、より多くのチャネルから人材を求めるのだ。そのチャネルとは、転職エージェントやスカウトサービス、求人サイトも含め、SNS、副業者、そして前述のリファラルなどが考えられる。

 これらの多チャンネルを通して、社員が一丸となって人材と接触する。たとえば従来の転職エージェントやスカウトサービス、求人サイトなどを人事担当者が利用するだけでは、顕在化した転職ニーズにしかアプローチできなかった。

 しかし、SNSや社員の人脈などを加えた多チャンネルを全社的に活用することで、潜在的な転職ニーズにもアプローチすることが可能になる。つまり、採用活動が点から面へ広がるのだ。しかも、募集しているポジションの業務内容と人材要件を熟知している社員がかかわることで、採用のミスマッチを防ぐことができる。

スクラム採用で期待されていること

 以上のことから、スクラム採用では以下の効果が期待できる。まず、採用力の向上だ。紹介やSNS、副業などの多チャンネル経由での採用機会が増えるため、採用効率が高まり、人事担当者の負荷も減らせる。

 次に、社員のエンゲージメントが高まる。エンゲージメントとは、愛社精神である。採用活動を人事担当者任せにするのではなく、全社的に取り組むため、求人の文言を作成したり自社の魅力をアピールしたりする活動に携わることで、自社への理解が深まり、愛着も湧くという効果がある。

 そして最も期待されるのが、優秀な適材を採用できる確率が高まることだ。業務内容と人材要件を理解している社員が採用に携わっているのだから、企業と人材あるいは職場と人材のマッチ度が高まる。その結果、離職率も下がることになる。

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