いじめ被害者だけでなく加害者へのカウンセリングが必要な理由

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――日本の学校では、いじめ加害者への対応としては「教師による指導」が一般的な印象があります。他方、アメリカの学校では「共感トレーニング」や「カウンセリング」を積極的に実施しているといいます。いじめの加害者児童・生徒に対してカウンセリングが必要な理由を教えてください。

松尾:いじめた児童・生徒にカウンセリングが必要だと思われる理由は、2つあります。1つ目は、いじめた児童生徒についての情報を心理の観点から得るためで、いわば「アセスメント(情報収集)」的な意味での心理面接です。2つ目は、いじめをやめさせ、その再発を防止する措置の一環としてです。どちらも、教師の「生徒指導」的な関わりだけでは不十分であり、カウンセラーとの関わりと合わせることで、より効果的になると考えられています。

――どうして、教師の「生徒指導」だけでは不十分なのでしょうか。

松尾:教師の生徒指導は、叱責や説諭などに偏ってしまうこともあり、いじめをした児童・生徒の内面を理解できない、表面的な謝罪の指導に終わる、大人への反抗心を強めるなどの結果になり、再発の防止の観点から不十分な時も少なくありません。

――現在の日本の学校では、スクールカウンセラーによるいじめの加害児童生徒へのカウンセリングは積極的に行われているのでしょうか。

松尾:「いじめの防止等のための基本的な方針(平成25年10月11日文部科学大臣決定、最終改定平成29年3月14日)」には、「いじめがあったことが確認された場合,学校は,複数の教職員が連携し,必要に応じて心理や福祉等の専門家,教員・警察官経験者など外部専門家の協力を得て,組織的に,いじめをやめさせ,その再発を防止する措置をとる」という記述があります。ここでいう「心理の専門家」の代表となるのがスクールカウンセラーです。

ただ、「必要に応じて」という表現があるように、いじめた児童生徒へのカウンセリングが常に行われるわけではありません。「平成29年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」(文部科学省)によると、「いじめる児童生徒への特別な対応」において、「スクールカウンセラー等の相談員がカウンセリングを行う」を実施した割合は、小学校で1.4%、中学校で3.1%、高等学校で8.3%、特別支援学校で5.1%と、ごくわずかです。

――それは、「必要がない」と判断されたからなのでしょうか? それとも、スクールカウンセラーの不足などが背景にあるのでしょうか?

松尾:両方の可能性があります。いじめをした児童・生徒の指導は、教師の方が得意であり、スクールカウンセラーは得意でないという認識を学校側がしている時もあります。また、スクールカウンセラーは、週1回程度の勤務の学校も多く、タイミングよくいじめた児童・生徒と話をすることができないこともあります。

――「スクールカウンセラー等のカウンセリング」以外には、いじめ加害者に対してどのような対応がされているのでしょうか。

松尾:多いものとしては、「保護者への報告」「いじめられた児童生徒やその保護者に対する謝罪の指導」「別室指導」「校長、教頭が指導」などが行われています。

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