いじめ被害者だけでなく加害者へのカウンセリングが必要な理由

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――現状では、カウンセリングを受けているのはいじめた生徒児童のごく一部ということですね。いじめ加害者のカウンセリングは、具体的にどのような内容なのでしょうか?

松尾:いじめた児童生徒へのカウンセリングについて、内容がしっかりと決まっているわけではありません。必要に応じて、どのようないじめ行為を行ったのか、いじめるときにどのようなことを考えていたのか(「相手にも悪いところがあるから、いじめていいと思っていた」など)、いじめるときの気持ち・感情はどのようなものだったか(「おもしろかった」「むかついていた」「自分も辛かった」など)について聞いていきます。

また、いじめの背景にストレスや情緒の不安定さがあるかを検討するために、いじめの出来事以外の、日常生活の様子などについても聞いていきます。いじめの背景に、いじめた児童生徒の辛さや苦しさなどが関係している場合は、そうしたことについては受容・共感を示しながらも、「だからといって誰かをいじめていいわけではないよね」ということを必要に応じて伝えます。

いじめた児童生徒の語りから得られた情報を総合的に考えつつ、反省を深めたり、謝罪についてどう考えているかを聞いたり、これからいじめをしないで生活するためにはどうしたらよいかを共に考えていきます。毅然とした指導は教師に任せることが多く、スクールカウンセラーはいじめた児童生徒の本音や背景にある気持ちに迫りながら、再発防止のための働きかけをします。

――いじめをやめさせるためにも、いじめた児童生徒の心理状況や本音を語れる場所は必要ですね。主犯だけでなく、いじめに加担した子ども全員にカウンセリング実施の必要があると言えますか?

松尾:いじめに加担した子ども全員にカウンセリングを行うかは、ケースバイケースです。加担した児童生徒の中で、あまり反省が深まっていない子ども、他児からいじめを強要されており自らも恐怖心や罪悪感を強く感じて不安定になっている子どもなどについては、スクールカウンセラーが関わった方がよいと思われます。

――しかし加害児童・生徒やその保護者が、カウンセリングを勧められても拒絶するケースも考えられます。

松尾:カウンセリングは必ずしも強制ではありません。カウンセリングを勧められても、任意の場合は受けることを望まない児童生徒や保護者もいます。一方、強い罪悪感などから児童生徒や保護者が動揺している場合、自ら進んでカウンセリングを受ける場合もあります。あるいは、教師等の対応について不満を感じている児童生徒や保護者の場合も、その不満を聞いてもらうためにカウンセリングを希望する場合もあります。

――では、カウンセリングが必要な加害児童生徒や保護者が拒否反応を示した場合は、どのような対応が取られるのでしょうか?

松尾:本来カウンセリングは強制的に行うとその効果が薄れることも多いといわれています。しかし、いじめに関わった児童生徒やその保護者に対して、「指導の一環として、カウンセラーとも話をしてください」というように、学校の指導の一環として、やや強く求める場合もあります。このような場合、いじめをした児童生徒とその保護者は嫌々カウンセリングを受けることもあるのですが、それでも、カウンセラーが適切に対応すれば、結果的に「受けてよかった」と感じることも少なくありません。

――カウンセラーの“適切な対応”とは、どういった対応なのでしょうか。

松尾:いじめをした児童生徒の話をじっくりと聞き、十分にその背景を理解した上で、児童生徒が自分の行為をしっかりと振り返り、反省することを促すような対応です。状況によっては、複数回の対応が必要になることもあります。

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