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「体罰」と「しつけ」の線引きをどうするか 児童虐待防止法改正と民法の“ねじれ”

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「Getty Images」より

 6月19日、親による子供への体罰禁止を盛り込んだ改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が、参院本会議で可決、成立した。2020年4月から施行される。

 千葉県野田市で小学4年生の栗原心愛(みあ)さん(当時10)が虐待を受けて死亡した事件など、親による子供への虐待事件が相次いでいることから、親による「しつけ」という名の体罰の禁止に踏み込んだ。改正法では、「親は児童のしつけに際して体罰を加えてはならない」と盛り込まれた。
 
 しかし、これがニュースやワイドショーで取り上げられると、SNSなどでは親による子供への体罰に対して、容認派と反対派が激論を戦わせている。

 体罰反対派からは、「しつけであろうが、体罰は良くない」「自分の子供であっても、一人の人間であり、人格も尊厳もある。体罰でしつけをするのは、人格や尊厳を否定している」「親は子供に対して痛みで教え込まずに、言葉できちんと諭す努力をするべき」などの声が上がっている。確かに世界ではすでに54カ国が体罰を法律で禁止している。
 
 一方、体罰容認派からは、「しつけと体罰、虐待は違う」「親は子供に対して、世の中に迷惑を掛けないように、しつけを行う責任がある。その一部として、多少の体罰は容認されるのでは」「言葉が理解できない年齢では、しつけを行うために体罰を行うことは仕方がない」といった意見が出ている。

 なかでも、「頭をポンと叩くのは体罰なのか。それともコブが出来たら体罰か」「手の甲を軽く抓ることは体罰か。アザが出来たら体罰なのか」「人を叩くのはいけないと教えるには、叩かれた時の痛みを教えるのが一番いい。人の痛みを知ることは大切」「体罰の基準があまりにも曖昧。何をしたら体罰の該当するのかを教えて欲しい」と、体罰の基準がわからないとの疑問を投げかける声がもっとも多い。

 こうした疑問に対して、厚生労働省は、「体罰の範囲については今後指針で定める」としており、体罰のガイドラインを提示する方針だ。どの程度まで具体的な例示となるかは不明だが、しつけと体罰の“線引き”をするのは、非常に難しいと思われる。

「懲戒権」の見直しが必要

 この親による子供への体罰禁止問題は、もうひとつ重大な問題を内包している。それは、改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が親による子供への体罰を禁止しても、民法では認められていることだ。つまり、この問題は法体系として統一されていないのである。

 民法では「懲戒権」が認められており、親権を行う者は、子供に対する「懲戒権」を有している。「懲戒」とは、①不正または不当な行為に対して制裁を加えるなどして、こらしめること②特別の監督関係または身分関係における紀律の維持のために、一定の義務違反に対して制裁を科すること、を指す。

 民法第820条の監護及び教育の権利義務では、<親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う>とし、民法第822条では、<親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる>と定めている。

 つまり、親権を行う者はその裁量によって、子供に対して制裁(不適切な行動を改めさせる目的で、身体や精神に苦痛を加えること)を行うことができるということ。もちろん、過度の制裁は「懲戒権の濫用」となり、児童虐待あるいは傷害、暴行とみなされることになる。

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