「老後2000万円問題」解決のために若者が取るべきアクション

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「Getty Images」より

 6月3日に金融庁から発表された報告書に関する官邸の対応や国会での取り扱い方が連日報道されています。

 金融担当大臣が受け取りを拒否したり、自民党の国対委員長が「報告書はもうなくなった」と存在そのものを否定したり、挙げ句の果てには報告書の発行元である金融庁の企画市場局長が「配慮を欠いた」と謝罪したりする始末。

 そんなにこの報告書に書いてあることが「社会悪」となるような内容だったのでしょうか。

社会にパニックを与えるような内容ではない

 この報告書の正式名称は、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」と言います。

 ワーキンググループのメンバーは、大学教授や投資信託に関する企業や研究所の長など総勢21名。付属文書も含めて56ページの報告書です。とある国会議員は「5分で読める」と自身の速読術を自慢されていましたが、もっと早くわかるようにこの報告書の内容を5行でまとめてみると、以下のようになります。

「日本人はとても長生きで人生100年時代を迎えました。65歳でリタイヤしてもまだ人生35年あります。でも老後の生活に現状では月5万5000円足りないので、2000万円くらいは貯めておきましょう。そのために若い頃から長期・積立・分散投資による資産形成をしていきましょう。それには税制面でも優遇されている積み立てNISAやiDeCoがお勧めですよ」

 つまりこの報告書では、日本の高齢社会を取り巻く環境変化をしっかりと整理し、老後の生活を送るために必要な資金を提示、その上でどのように資産形成をしたら良いかを提言するという内容なのです。私は1時間ほどかけて読んでみましたが、決して社会にパニックを与えるような内容ではないと解釈しています。

 さらに言えば、第1章の「現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)」では50近い図表を掲載して、日本人の人口動態、リタイア世帯の収入・支出の現状、金融資産の保有状況ならびに意識調査などを理路整然と語っています。特に統計図表は、その使い方にごまかしや紛らわしさはなく、大学での教養科目の教材として使えるほどの出来ばえです。

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(以上の図表は、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」より引用)

私たちは今後何歳まで生きる?

 なお、2000万円という金額の根拠は先にも述べたように、リタイヤ夫婦の平均収入と支出の差額が5.5万円でリタイヤ後25年生きることを前提とした想定貯蓄金額となっていますが、家のリフォーム代、介護費用、葬儀といったライフステージに応じて発生する費用も考慮すると、最大で約3500万円の貯蓄が必要であるとの指摘もなされています。

 ちなみに、長寿化に関するデータで特筆すべきは「60歳の人が95歳まで生存する確率が25%」という箇所です。これは10年前の生存確率が14%と試算されていたことと比べても大きく上昇しています。

 1947年、日本の平均寿命は50〜55歳といわれていました。それは乳幼児死亡率が10%を超える状況だったための試算です。ではこの年に生まれた人が70年後の2017年、どれだけの割合で生存していると思いますか。

 正解は75%。実に4人のうち3人は70歳まで存命です。

 では80年前に生まれた人はどうでしょうか。1937年生まれの方が89歳まで存命する確率は55%と半数以上です。つまり現在の平均寿命である81〜88歳というのは平均値でもありますが、統計学でいうところの中央値であるともいえるのです。

 そして約90年前に生まれた1927年生まれの人の90歳存命率は22%。5人に1人は90年の人生を送っています。その一方で出生率は人口1000人に対しわずか8人。65歳以上の人口が27.3%を占める「高齢社会」が形成されていったのです。

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