「老後2000万円問題」解決のために若者が取るべきアクション

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官邸が報告書の存在を否定する理由

 では、なぜ官邸はこの報告書をなきものにしようとしているのでしょうか。それは、人生100年安心設計とされた「公的年金」だけでは老後の生活が不十分であることを如実に示した資料であるからです。

 そもそも年金とは「貯蓄」ではなく、現在働いている世代が保険料として支払ったお金を高齢者などに年金として給付するという「賦課(ふか)方式」の考え方で成り立っています。先に述べたように高齢者比率がまずます増え、労働者世代の減少に歯止めをかけられない状況では、年金制度そのものの根幹が崩れていくのは目に見えています。

 39年前の1980年に発表された田中康夫氏の『なんとなくクリスタル』の巻末には、「人口問題審議会『出生率動向に関する特別委員会報告』」という報告書より出生率の低下と人口減少率、老年人口比率の上昇、厚生年金保険料のアップの政府見通しが記されています。40年も前に指摘されていた問題点を今の今まで先送りし、政府が何も対策を講じていなかったという現状がこの報告書で晒されたわけです。

  なお、老後までに2000万円貯めるべきとの提言に関して「報告書において、60〜70代の平均金融資産額が1830万円であることから、2000万円を貯めることはそれほど難儀なことではないのでは」という指摘もあったようですが、60〜70代が現役世代であった1980年代には預金金利が6〜7%でした。複利計算であれば、1000万円の貯蓄は10年も経てばただ預けておくだけで倍の2000万円になったのです。現在の普通預金の金利は0.001%ですから、1000万円を10年預けて金利は1000円。金利にかかる税金やATMの手数料を考慮すれば手元に残るのは微々たるものでしょう。

老後2000万円問題解決への道

 本来なら政府はこの報告書の示唆するものを読み取って、少子化対策や非正規労働者への給与対策などを講じ、年金の財源確保のための行動をとるべきです。しかし、なぜか政府は「国民のみなさんに誤解を与えるもの」として受け取りを拒否し、この現状から目を背けてしまったのです。特に最も国政選挙への投票率が高い60代の国民に対してこの事実を知らせてしまえば、7月に行われる参議院選挙への影響は多大なものになるとお考えになったのかもしれません。(データ引用 総務省サイト

 この報告書に記載されている提言を真摯に受け止め、非正規雇用と正規雇用の給与格差是正、産休育休時の給与100%保証、終身雇用制度崩壊に伴う即時精算型報酬支払いなど、生産性の高い優秀な若年層に対する金銭面のサポートを早急に検討することが、この報告書への答申になるのではないでしょうか。

 では政府官邸の重い腰を上げさせるために必要なことは何でしょうか。それは「若年層の投票率を上げること」。これにほかなりません。20代の投票率が33%という現状では、その世代に対する政策が後回しにされても文句は言えないでしょう。投票というアクションを起こせば、その動向を無視するわけにいかなくなります。それが老後2000万円問題解決への一歩です。

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