賃金を上げて募集できない事情
さて労働者の売り手市場が続き、求職者側が労働条件面をシビアにみることができるとはいえ、「この条件なら働いていけそうだ」と思える求人案件はどれほどあるのだろうか。先日、山口県労連や京都地方労働組合総評議会が、一人暮らしに必要な月給は最低でも24~25万円だとする試算を発表しているが、この金額を満たさないどころかかなり低い給与を提示する求人も多い。
川畑氏「月給24~25万に満たない求人は、圧倒的に多いですね。『月収25万円』ということは単純に年収換算すると300万円くらいになると思いますが、年収300万円の求人は東京都では珍しくないものの、地方では非常に少ないです。
また、東京都で生活すると家賃や物価などのために地方で生活するよりも出費が増えるので、年収300万円でも生活していくのは難しいです。にもかかわらず、『月収20万円、賞与ナシ、年収240万円』という求人もザラにあるのが現状です」
他方、UZUZのような仲介業への報酬は上昇している。
川畑氏「企業から受け取る“紹介手数料”の相場は上がっていると思います。売り手市場になったことで人材紹介会社のニーズが高まり、紹介手数料を上げる交渉が活発になったことが要因に挙げられます」
では、なぜ人手不足を嘆きながら給与を上げることは出来ないのか。
川畑氏「たとえば『年収240万』の募集を『年収300万』に変更すれば、それまでより応募者は増えるかもしれません。しかし基本的に、年収を下げることは出来ないので、新規採用した従業員が以前からいる『年収240万円』の社員と同じ働きであったとしたら不平等が生じますよね。既存の社員の給与もUPしなければならなくなります。マネジメント職など管理者の立場の人材であれば別ですが、新入社員や中途社員の給与だけをポンッと上げることは現実的に難しいです。そのため、『人材紹介会社に高い紹介手数料を払って、頑張って人材を集めてもらったほうが合理的だ』と判断されているという状況です」