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性虐待やDVの被害者が“恋”のリハビリにネットの「出会い系掲示板」を活用したわけ

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虐待サバイバーは夜を越えて

 日常的な暴力や性虐待で親に支配されて育った児童も、いずれ「おとな」になる。本連載では、元・被虐待児=サバイバーである筆者が、自身の体験やサバイバーたちへの取材を元に「児童虐待のその後」を内側からレポートする。

 今回取材に協力してくれた綾さんは、17歳まで家庭で実父の虐待を受けて育った女性だ。現在35歳。25歳のときに共通の趣味がきっかけで知り合った男性と結婚し、10年になる。母はネグレクトで食事もなく、何か願望を口にすれば殴られた。父は綾さんが中学進学した頃から性的な行為を迫るようになり、抵抗すればやはり何度も殴られた。打ち明けたところで「嘘つき」と信じてもらえなかったら……そう思うと、誰にも言えなかった。

 暴力に満ちた家庭の中で、綾さんを唯一癒してくれたものは、アニメやゲームだった。1990年代は、子供向けのアニメが夕方の時間帯に多く放送されていたのだ。

私が実父のキスを拒めず、教師やスクールカウンセラーにも口を閉ざした理由

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ウェジー 2019.07.03

『ちびまる子ちゃん』を見ると、惨めでツラい

 家の中が見たくなければ、別のもので目を覆ってしまえばいい。
 聞きたくないものがあれば、別の音で耳をふさいでしまえばいい。

 そう切望した綾をやさしく包み込んでくれたのは、アニメやゲームの世界だった。

 綾が小学生にあがった1990年代は、「ちびまる子ちゃん」(1990年)、「クレヨンしんちゃん」(1992年)、「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)、「ONE PIECE」(1999年)など、今なお人気を誇る伝説のアニメが多数輩出された時代だ。綾もその恩恵を享受したと思いきや、逆にそれらに追いつめられることもあったと言う。

「ホームドラマ系の『ちびまる子ちゃん』は、愛されていない自分が惨めになるので見ていられませんでした。まる子のお母さんはいつもガミガミ怒ってるけど、あれは子どもをちゃんと“見ている”からでしょ? “おうち要素”や“恋愛要素”があるのはツラいんです。だから、『ドラゴンボール』とか『幽遊白書』の格闘系を好んで弟と見ていましたね」

 ファンタジーの格闘アニメに夢中になった綾は、その流れでスーパーファミコンなどの家庭用ゲームへとハマっていく。主人公は、わたし。倒すべき“敵”を小気味よく打ちのめせば、その成果は景気のいい効果音とともに祝福される。やった分だけ“認めて”もらえる。

 「没頭さえできれば何でもよかった」という綾は、荒れたリビングで膝をそろえ、弟と二人でコントローラーを握りしめながら、目まぐるしく変わる映像にのめりこんだ。両親の外出時を見計らいながら、多いときで1日10時間をプレイにつぎ込んだ。

 高校に入学し、アルバイトができるようになってからは、念願のプレイステーションを購入。中でも1995年にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)から発売されていたRPG『テイルズ オブ ファンタジア』を含む「テイルズ オブ」シリーズは、“現実逃避”には最高の作品だったと振り返る。

 同シリーズは、日本の二大RPGとして名高い『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』を追うような形でリリースされた。“主人公が巨大な悪を倒す”というストーリーは変わらないものの、戦闘シーンは敵味方が同時に戦えるアクションゲームのようなつくりとなっており、一定のファンを獲得していた。

 ゲームのシステムを説明する綾の口調は、筋金入りのゲーマーそのものだ。

「とにかく“やりこみ要素”がすごいんです。戦って勝つと得られる、モンスター図鑑とかアイテム図鑑があって、それを全部コンプリートしていくことに快感を覚えました。空欄を埋めていく感覚ですね。オヤがぎゃーぎゃーうるさくても集中できるんです。最初のうちこそストーリーを気にしていましたが、そのうちどうでもよくなりました」

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