筑波大学の推計によれば、国内のアルコール依存症人口は約100万人。うち医療機関で受診している人数は5万人に留まる。
「過剰な飲酒をしている人は国内で1000万人」という分析表現もあるが、その「過剰な飲酒」の量とはいかほどだろうか。厚生労働省が「健康日本21」のなかで定義している「節度ある適度な飲酒」とは「1日平均20g程度の飲酒」(①)。「1日平均60gを超える飲酒」は「多量飲酒」(②)と警告している。
具体性に①「適度(20g程度)」は、ビール中瓶(またはロング缶)1本や日本酒1合、缶酎ハイ350ml(7%)1本に相当。一方、②の「多量」は、ビール中瓶3本、日本酒3合弱、25度焼酎300mlに相当する。ワインならばグラス2杯(200ml)、ウィスキーならばダブル1杯(60ml)程度は「適度」の範疇だ。
飲酒にまつわる健康問題や社会問題の諸々を含む「アルコール関連問題」について、世界保健機構(WHO)は、60以上もの病気や外傷が飲酒によって引き起こされると警告。問題の根は深く多大だ。
WHOの診断ガイドラインでは、飲酒に伴う何らかの精神的、身体的障害が認められる場合を「harmful use(有害な使用)」と定義している。一方で、俗にいう「酒乱」によって社会的、家族的問題が引き起こされている症例を米国精神学会では「alcohol abuse(アルコール乱用」)と呼ぶ。
全国初の「飲酒量低減外来」がスタート
アルコール依存症にも男女差があり、女性のほうが比較的短期間で依存症に発展しやすい。また、発症リスクの50~60%は遺伝要因だ。
いずれにしても、アルコール依存症は意思の強さの次元ではなく、自力で治癒させることは難しい。深刻化している場合、迅速に専門医の診断を受けるべきだというのが専門家の意見だ。そんな時代の趨勢に呼応すべく今年1月、筑波大学との提携により北茨木市民病院附属家庭医療センター内に「飲酒量低減外来」が開設された。名称を敢えて「アルコール外来」とはせずに「飲酒量低減外来」とし、「断酒」ではなく「減酒」を掲げる。精神科以外では全国初の総合診療システムだ。
飲む前に服用するだけで酒量が減る? アルコール依存症の新薬がついに発売開始
花見、歓送迎会、同窓会など春爛漫のほろ酔いに誘われ、心浮き立つ酒宴に事欠かないこの季節。だが、飲み過ぎにはアルコール依存症のリスクがつきまとうことを忘…
依存者に限らず、その周囲も、こうしたアルコール依存症の治療サポートをうまく活用していくことが、問題解決への大きな一歩となるだろう。
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