
「Getty Images」より
数年の間に急激な変化を遂げるインターネットサービス。特に、娯楽要素が強い動画サービスはその傾向が顕著だ。ヒカキンなど人気YouTuberの登場に端を発して存在感を強めてきたYouTube。その隆盛と入れ替わるように、“観るものから出るものへと動画の認識を変えた”ともいわれるニコニコ動画は年を追うごとに有料会員者数を減少させ、後退の一途を辿っている。
また、映画やドラマなどを視聴できる動画サイトにおいても、Amazonプライム、Hulu、Netflixなど、続々と新たなサービスが誕生し、その変化の勢いは留まることを知らない。
どんなメディアやカルチャーでも、活況を呈し成熟してくると、王道から外れた奇道や邪道を狙った表現が生まれてくるもの。1950年代に放送が開始され、娯楽の王道であったテレビも、成熟期を迎えた70年代から80年代は、差別やお色気の限りを尽くした番組が多くなり、国会で槍玉にあげられたこともあったほどだ。
インターネットメディアも、ちょうどその時期に差し掛かった印象がある。既存メディアでは扱えないようなディープなテーマや人物が繰り広げる、いわばネットらしい“わかる人にはわかる”内容も多いのだが、中には犯罪を助長するものや、不法行為そのものであるコンテンツもある。
世間を騒がす、ネットの不法者たち
ここ最近を振り返っても、逮捕にまで至らずとも、話題になった出来事は枚挙にいとまがない。YouTuberの小さな炎上は日常茶飯事だ。万引きの生中継や公共の場所で許可なく企画を実行して書類送検されるYouTuberもいれば、ペットにイタズラを仕掛けて「動物虐待だ!」と批判を浴びるYouTuberまで、無法者が後を絶たない。
一方、ネット番組でも同様の事態が巻き起こりつつある。地上波テレビでコンプライアンスにがんじがらめにされている鬱憤を晴らすかのように、過激さを売りにする番組が次々と配信されている。
とりわけ、最新シーズンが登場するたびに各種メディアから強く批判されるのが、Amazonプライムで配信中の『ドキュメンタル』だろう。集められた芸人同士が笑わせ合いを繰り広げ、優勝者に賞金1000万円が贈られるという企画内容。お笑い好きとしては心が動かされる魅力的な内容であるが、その実態は下ネタやパワハラのオンパレードだ。「途中で観るのをやめました!」という視聴者コメントが多いのも、この番組の過激さ(いや、低俗さ)を物語っている。
収入経路を断つことを抑止力に
収益を目的として配信を行っている悪質YouTuberに対しては、広告代理店側で 具体的な対策が検討されている。ひとつの方法が、広告を掲載させない動きだ。大手WEB制作会社に勤務する、広告ディレクターのT氏は、次のように説明してくれた。
「YouTubeで動画を観ているとCMのように広告が流れますよね? 広告主の企業は、あのCMが悪質YouTuberの動画で流れないようにしたいと考えています。『こんな動画に、この企業がCMを出すのか?』と思う視聴者もいるかもしれないと判断しているようです。
広告クライアント側は、少しずつですが、モラルに欠ける動画にCMが出ないように対策を興じようとしているのです。そうなると、現在のように面白さだけを追求する悪質なYouTuberは一攫千金を狙えなくなるので、自然と淘汰されていくでしょうね」
YouTubeの運営側であるGoogle社も対策に本腰を入れ始めた。良識に反する行為を配信した動画チャンネルに対し、一時的に広告停止する措置をとるなど、新たな規則を設けることで悪質YouTuberの追放を目指している。
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