資本主義が悪なのか?〜『ナニワ金融道』が真に批判したもの

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政治と企業の癒着の構図

 それを端的に示すのは、運送業者「献金急便」の社長、浦金喜太郎と「日本搾取党」の府会議員、銭丸とのエピソードだ。浦金は郊外にトラックターミナルを所有しているが、農業委員会の許可がなければ転用できない土地であるうえ、市街化調整区域の規制もかかっている。

 そこで浦金は銭丸に献金し、府議会や農業委員会への工作を依頼する。規制が外れれば地価の大幅な上昇が見込まれるから、その利益を山分けしようという算段である。

 日本や世界のあちこちでありそうな、いや現実に存在する、政治と企業の癒着の構図だ。けれどもこれは、資本主義といえるだろうか。

 デジタル大辞泉によると、資本主義の特徴のひとつは、市場メカニズムによって運営されることだ。しかし官民の癒着は、市場メカニズムとは呼べない。一部の企業が政治と癒着し、規制や補助金などで自社だけに有利な条件をつくり出せば、むしろ市場メカニズムと自由な競争を阻害する。

 官民の癒着を特徴とする経済は、資本主義と混同されやすいが、市場メカニズムで動く本来の資本主義とは別物である。これを縁故主義(クローニズム)と呼ぶ。

 マルクスは資本家の悪を糾弾し、労働者を救えと叫んだが、自身は裕福な家庭の出身で、労働現場で働いた経験はない。彼が唱えた理論を無理に実現しようとした結果、ソ連や北朝鮮など非人間的で貧しい社会主義国を生み、飢餓や粛清で多数の人が犠牲となった。

 一方、青木氏は30以上の職を転々とした経験を生かして描いた『ナニワ金融道』で、マルクスの誤った図式に陥ることなく、官民癒着に歪んだ日本経済の現実を正しくとらえた。エッセイでも、税金による銀行救済を厳しく批判している。これも市場メカニズムとは無縁な縁故主義の象徴だ。

 米国で反資本主義が盛り上がった「ウォール街を占拠せよ」運動も、そのきっかけは、2008年のリーマン・ショックで経営危機に陥った金融機関の救済に政府が乗り出したことだった。

 青木氏が専門外のエッセイで述べるマルクス礼賛に惑わされず、『ナニワ金融道』をじっくり読んでほしい。真の問題は資本主義にではなく、本来の資本主義を阻害する縁故主義にこそあることが理解できるはずだ。

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