健康経営を推進する政府
本稿でもすでに登場しているが、経済産業省は企業の健康経営を促進するために、「健康経営優良法人」と「健康経営銘柄」の認定制度を実施している。まず、「健康経営優良法人」とは、健康経営に取り組んでいる企業を「経営理念」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」の5つの認定基準で評価し、優良な健康経営を実践している企業を「健康経営優良法人(ホワイト500)」として認定する制度だ。
この制度は、健康経営に取り組んでいる企業に社会的評価を与える環境を整備することが目的とされている。
認定されると健康経営優良法人のロゴマークを企業のPRに使用することが許され、地域の金融機関からの資金調達で金利上の優遇を受けたり、自治体の公共調達においても優遇されたりするなどの措置を受けられる。
健康経営優良法人の認定制度は、健康経営銘柄の認定制度に似ているが、上場している必要がなく認定企業数にも制限がないなど、健康経営銘柄より認定が受けやすくなっている。
一方の健康経営銘柄は、やはり健康経営に取り組んでいる企業を認定する制度だが、健康経営の面から投資家にとって魅力がある企業を認定するため、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している。
そのため、健康経営銘柄の認定を受けるためには、東京証券取引所に上場していることが条件になる。それ以外にも、健康経営度調査に回答した企業の上位20%であることや、ROE(自己資本利益率)が直近3年間で平均0%以上であることなど、健康経営優良法人よりも認定のハードルは高くなっている。
健康経営で生き残る
健康経営は、従業員の自助努力を当てにしていては取り組むことはできない。従業員の健康管理は、企業のトップ自らが先頭に立ち、従業員の健康増進こそが企業の成長の為の投資であるという考え方を持てなければならない。
従業員を単なる経費として考えているような経営者には、まずは経営者自らの意識改革が必要になる(そのような経営者には意識改革自体が無理かもしれないが)。
目先のコスト削減にばかり気を取られるのではなく、将来の企業の成長のために従業員の健康に投資するという考え方ができなければ、令和の時代に生き残ることは難しいかもしれない。健康経営を目指すことは、これからの企業の在り方を考える良い機会となるはずだ。